“話す力”を養うためにはインプットが重要!

企業の新入社員採用の基準をはじめとして、最近とみに「コミュニケーション能力」が重視されているようだ。
その原因の一つに、かつての日本社会独特の“阿吽の呼吸”が通じにくくなっていることを挙げることができる。

一昔前の日本社会ではメディアが限られていたので、みなが同じテレビ番組を見て、(銀行員の場合)同じように日経新聞を読んでいた。男性の多くはプロ野球中継を観戦しており、共通の話題には事欠かなかった。

いきおい、形成される価値観も同じようなものになってしまい、言葉や文字でしかり表現しなくても”阿吽の呼吸”でわかり合えた。「昨日の試合、惜しかったねえ」だけでも話が通じたものだった。

ネット媒体の出現によって価値観の多様化がもたらされた。
職場内に正社員と非正規社員が同居するようになり、これまた価値観が多様化した。

こうなると、“阿吽の呼吸”は通用しない。「この夏いくら出るかな?」と非正規社員に尋ねても、ボーナスのことだと理解してくれるのは恵まれた非正規社員だけだ。

コミュニケーションで最も重要なことは「聴く力」だ。
自分の話を聴こうとしない相手とは、誰しもがあまりお付き合いはしたいとは思わないものだ。

相手の話に辛抱強く耳を傾けただけで、相手の信頼を勝ち得たという人を私は何人も知っている。
「聴く力」が最も重要だとしても、話し下手だとコミュニケーションが成り立たない。とりわけ、プレゼンや会議での発表の場で、聞き手が眠くなってしまうようでは困ってしまう。

最も手っ取り早く話す力を養う方法は、たくさんインプットすることだ。

私は司法試験受験時代、説明が上手な講師たちの講義テープを何度も繰り返し聴いていたので、その後、教壇や演壇に上がってもさほど苦労せずに済んだ。説明上手な人の講義を繰り返し頭の中にインプットしたおかげだと、今でも感謝している。

また、重要な数字やテクニカルタームはしっかり憶えておく必要がある。
相手にしっかり印象づけるためには、明瞭な発音で繰り返し話す必要があるからだ。

重要な数字やテクニカルターム、定義などはしっかり暗記しておこう。具体例を挙げることも重要だろう。

「この点については、かつてA社とB社が対立したことがあります。最終的にA社を勝利に導いたのは、先ほどご説明した○○という手法でした」という程度の具体例でも、聞き手には大きな印象が残る。自分が話している内容に関しては、相手は小学生レベルだと思って丁寧に話そう。

実際、予備知識が全くない状態で話をされた相手としては、丁寧に話してもらわないと最初から付いていけなくなってしまう。常日頃から「話し方」お手本になる人と反面教師を見つけておこう。

反面教師は案外大事な存在なのだ。
「こういう話し方をしているから、わからなくなるのだなあ」と、しっかりNGを示してくれる。

私自身、どちらかと言うと反面教師からより多くの教訓を得たと思っている。

説得の戦略 交渉心理学入門 (ディスカヴァー携書)
荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年3月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。