今後の都政改革(見える化分析)では副知事と所管局長の責任が重大

都政改革本部(2016年9月の第1回、左から3人目が上山氏):都庁サイトより(編集部)

昨日の都政改革本部会議(第15回)で提出した私の意見です。

今後の「2020改革プラン」の実行に向けて

上山信一(特別顧問)
2017年3月28日

今後の「見える化改革」の事業分析及び分析を終えた15事業の見直し結果の具現化に向けては以下に留意されたい。

1.これから分析を行う事業の「分析品質」の確保について

① 都民の苦情(知事への手紙、意見箱、アンケート等)を少なくとも3か年分は集計し、副知事以下の推進部会で共有化。その傾向と原因を掘り下げるべき。また苦情や要望の典型や具体事例は見える化分析の報告書に掲載のうえで公開すべき。
➡苦情は改善のヒントの山。なおコメントは生の言葉のままで収集・公開すべき

② 公園や文化・スポーツ施設、あるいは教育や福祉医療系等の専門サービス分野では多くの都民は経営品質を評価しきれない。現場で直接、施設やサービスに携わる専門家(監理団体職員、再委託の民間事業者、市町村職員、ケースワーカー、医師、看護師、教員など)への直接インタビューやアンケートを通じて実態を把握すべきである。
➡各局職員が(実態調査を経ずに)過去の庁内会議資料をもとに事業分析を行っていた例があったがヒアリングで根拠が薄弱と判明し、やり直しとなった。

③ 何を分析の対象事業とするか最初にきちんと定義する。具体には当該事業の予算額、国や市町村との分担状況、法令条例上の根拠、所掌部署(本庁、出先、市町村等)を明示し、さらに受益者が誰か(団体等、個人受給者、市町村等)をはっきりさせた上で政策手法の妥当性、意義、受益と負担の関係、費用対効果などを点検する。数字が得にくい事項についても概算を出す。
➡これまでの事業分析では「事業」の定義を広く、一般的にとらえ、しかも受益者や提供経路も不明確なまま「全体としてうまくいっている」と総括した例があった。

④ 単なる事業概要の説明書類では「見える化分析」の成果物になりえない。見える化分析では、「都民ファースト」「ワイズスぺンディング」「情報公開」の視点から、新たな課題設定、調査分析を行い納税者や利用者にとってわかりやすい言葉とデータで事務事業の都民生活への効果を点検評価する。
➡「見える化分析」では“見えていない課題”を先取りし、原因を深堀りした上で解決策を提示し、実行の期限と責任体制を約束する。
➡いわゆるラインの上下関係(担当から課長、部長、局長への流れ)の中で既存の資料に基づく自己点検をやっても現状を変える案は出にくい。客観性を確保するために副知事が所掌を超えた立場からチェックすべき・・緊張関係を構築する会議の設計が重要。

2.情報公開の徹底について

① 「見える化」改革の趣旨は、事業の実態、費用対効果を都民やステークホルダーに示し、広く意見を喚起し、衆人環視の中でPDCAを回していくことにある。したがって「見える化」の分析報告書は(HP上に載せることは当然として)担当局長、副知事が記者向け懇談会や市民向けの出前講義で説明する等、公開の場で情報発信すべきである。

② すでに15の事業について「見える化分析」を終えている。これらについては(1)より深い調査を実施中のもの、(2)課題解決の具体策を検討中のもの、(3)既に実施済みなど状況は様々だが、進捗は少なくとも半年ごとに都政改革本部会議でチェックし、HP上でも公開すべきである
➡進捗状況も公開対象であり、「見える化」すべきである


編集部より:このブログは都政改革本部顧問、上山信一氏(慶應義塾大学総合政策学部教授)のブログ、2018年3月28日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた上山氏に感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、上山氏のブログ「見えないものを見よう」をご覧ください。