「院内残薬」問題の現状:皆保険制度の維持へ抜本的な改革を

鈴木 馨祐

写真AC:編集部

昨日「残薬」問題についての中間報告を厚生労働省から受けました。

昨年来私が中心となって、党の行政改革推進本部(行革本部)で進めている取り組みの一つで、本年も私自身が行革本部の事務局長を務めていることから、継続的に取り組みをチェックしているところです。

簡単に言うと、高額の抗がん剤は瓶(バイヤル)単位で薬価がついていますが、実際には瓶内に一人の患者さんに使い切れない薬が残っているケースが極めて多くなっています。そして、従来はそれを原則廃棄するようにという指導がされていました。一方、実態としては、(1)廃棄、(2)残薬を他の患者さんに使い請求としては二重請求、(3)残薬を他の患者さんに使いそのとおり請求、という三パターンが医療機関で見られていました。

厳しい医療財政の下で、税金や保険料の無駄・非効率を避けるためには、なるべく(3)に寄せていく必要があります。様々な試算がありますが、ある試算に依れば数百億円単位での医療費削減につながるとのものもあります。

そのような中で、最終的(5~10年後)には、使用量単位で薬価を設定することや、高額抗がん剤の使用が出来る病院を例えば無菌レベルの高い無菌室を備えた病院に集中させる等の対策が必要です。

一方当面の対応としては、曝露防止器具(薬の瓶に取り付けることで気密性を維持し中の薬の大気への漏れを防ぐ)を使用することで、使用後一定時間は残った抗がん剤を安全に使用できる状況をつくるといった対応が必要です。これは同時に患者さんや医療関係者が一部毒性を持つ抗がん剤に曝されないという安全衛生の観点(アメリカでは判例上相関が認められている)からも重要な対策です。また、医療機関からの保険請求の書類上、残薬を廃棄したのか、他に使ったのかを記載させるようなフォーマット変更の検討も必要です。

昨年9月にまず二重に請求しているようなケースを不可とする通達を厚生労働省から発出させることとし、引き続いて、(1)無菌室や曝露防止器具の使用によりどの抗がん剤でどの程度安全性が確保されるのか(日本では即時廃棄の指導を行っていた一方、アメリカでは一定条件下で72時間まで可としているケースが多々ある)、(2)その対応をした場合の費用対効果分析、等の調査を年度内に行うとの対応を等から要求し、厚労省側が受諾した経緯がありました。

今後医療の高度化、高齢化に伴って、皆保険制度の維持のための抜本的な改革は避けて通れません。このことは私も積極的に関与しましたが先週の党の財政健全化特命委員会の小委員会の中間報告にも盛り込まれたところですが、その改革を行う中で、痛みを最小限に抑えるためにも、出来る限りの効率化・無駄の排除は行っておかねばなりません。地道な作業ですが、次世代への責任を担う政治家として、きちんと霞ヶ関や現場の対応が進むよう全力で努力してまいります。


編集部より:この記事は、自由民主党青年局長、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区)のブログ2018年4月4日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家  鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。