周囲に埋没する人とは?聞こえなければ挨拶ではない!

尾藤 克之

写真は書籍書影

「なぜか職場で誤解されてしまう」「ほんとうはいい人なのに、そう見られない」。そんなあなたが、正当に評価されるために身につけるべき、行動の原則がある。 行動を変えなければ、周囲の評価は変わらない。人は人を「見た目」で判断する。つまり、見た目を修正しないと損をすることになる。では具体例を紹介しよう。

今回は、今回は、『“仕事で損をしない人”になるための48の行動改善』(DO BOOKS)を紹介したい。著者は研修講師や風土改善のコンサルティングを専門とする長谷川孝幸さん。本書は、2013年に発刊されたものだが、新入社員にも読みやすい内容であることから、新年度のこの機会に紹介したい。

挨拶で評価が決まる

上司が出社した。会社では、すでに出社している部下たちが、上司のもとに駆け寄ってくる。次に、一斉に「おはようございます」の声が響きわたる。特別な用事か、電話中でもない限り、あなたも同じ行動をとるはずだ。

「あなたの声は上司に届いているでしょうか?他の同僚の声にかき消されていないでしょうか?あなたの声が上司の耳に届き、あなたの挨拶の姿勢が上司の目に入っているでしょうか?相手の耳に届いていなければ、それはしてないのと同じです。上司は聞いていないようでも、誰が挨拶をしているか把握をしています。」(長谷川さん)

「そして、『A君はいつも明るく気持ちがいい』『B君は気持ちにムラがある』『C君はおっちょこちょいだが挨拶はきちんとする』と見極めています。挨拶が聞こえないと『挨拶ひとつできない奴だ』と判断されてしまいます。ひどい場合、『こいつは会社に対して反抗的で生意気やヤツだ」とまで思うようになります。」(同)

悪意がなく挨拶をしているつもりでも、どう捉えるかは相手の勝手。「したつもり」が最も危険。あなたは知らないうちに反動分子にされてしまう。

「あなたは、他の人よりも弱い声、不明瞭な発音で挨拶をしていませんか?あなたは、『挨拶くらい』と思うかもしれませんが、相手に届いていなければ、していないのと同じです。挨拶で埋没してしまうような人は、成績でも埋没しているのではないでしょうか。そして、それに気づいていないのではないでしょうか。怖ろしいことです。」(長谷川さん)

挨拶で忠誠心まで疑われる

これはある会社のケースになる。鈴木さんは、専門商社のセブン商事に勤務する入社5年目の社員である。現在の役職は営業部営業一課係長。昨年の4月に係長に昇進したばかりである。昇進のスピードは社内でも平均的だった。その年の冬に、同期から課長が誕生した。彼は社内でも将来を嘱望されていたので、焦りはなかった。

翌年、鈴木さんの1年下から課長が誕生した。彼は経営者一族だったので焦りもなかった。翌年、鈴木さんは係長のままで、さらに1年下から3人の課長が誕生した。さすがに、鈴木さんは狼狽した。この3人は鈴木さんの元部下で、自分が教育してきたという自負がもあった。鈴木さんはそれなりの成績を上げていたので理由がわからなかった。

鈴木さんは、何がいけないのかがわからず悶々とするようになっていた。そして、とうとう休職してしまった。そんなとき、総務人事部にいる同期が会いに来てくれた。彼に打ち明けたら次のように言われた。「営業本部長や人事部長に評判がよくなかったみたいだよ。 挨拶もしないって言われていたよ」。鈴木さんはショックで愕然とした。

「これはよくある話です。鈴木さんは係長になった頃から、挨拶は部下からされるものと勘違いするようになっていました。上司にも、仕事の手を休めずにぞんざいな挨拶をすることがあったのだと思います。鈴木さんは大したことがないと思っていました。ですが、上司は怒っていたのです。だから昇進できませんでした。」(長谷川さん)

挨拶が与える影響

今回は、挨拶をテーマに構成した。記事用に脚色しているが、挨拶が与える影響について覚えておきたい。世界的に有名な飲料メーカーがある。荷物の配送前に、ドライバーが集合する。その際、挨拶ができない者は当日のシフトから外される。「挨拶ができないくらい体調が悪いのだから働かせられない」という理由である。

仕事で成果をあげるにはそれなりの努力が必要とされる。挨拶は、(1)大きな声で、(2)きびきび行動、(3)自分から挨拶、(4)明るい笑顔、があれば、誤解される危険性は少ない。すぐに出来ることは改めたいもの。油断大敵であるとも申し上げておきたい。

尾藤克之
コラムニスト
——————
代議士秘書、コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。著書はビジネス書、実用書を中心に10冊。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)が発売後、1週間で重版。現在好評発売中。
個人ブログ:尾藤克之のブックルポ Twitter:@k_bito