社内のパワハラ実態を把握したい!実はいい方法がある!!

写真は平井社長(WBS、3/16放送)

私は人事(HR)を専門としている。人事企画の制度設計、アセスメント開発が専門になる。日本初のモバイル公式サイトEQ診断作成(インデックス)、日本初の結婚情報産業EQ診断作成(Zwei)、世界最大のリスクマネジメント団体であるリスクマネジメント協会正会員講座(HCRM)EQ診断作成など、事業として公開できる実績も少なくない。

新年度になると、企業向けの様々な趣向を凝らした適性検査がお目見えする。今回は、社内のパワハラリスクを炙り出す診断を紹介したい。診断名は「パワハラ振り返りシート」(以下、本診断)。3/16に「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で紹介されて以降、話題になっている。社長の平井俊宏さんに診断の特徴について伺った。

進まないパワハラ対策

平成28年度に厚生労働省により発表されている「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」では、8割強(82%)の企業がパワーハラスメントの予防・解決への取組が経営上の課題として、「非常に重要である」もしくは「重要である」と回答している。

従業員側に「勤務先のパワーハラスメントの予防・解決のための取組の実施状況」を聞いた項目では「積極的に取り組んでいる」「取り組んでいる」との回答は全体で2割強(25.7%)に留まる。結果からは、パワハラ対策が進んでいない実態も明らかになっている。

「政府が主導する『働き方改革実行計画』でもパワハラやメンタルヘルス対策として、『労働者が健康に働くための職場環境の整備に必要なことは、労働時間管理の厳格化だけではない。上司や同僚との良好な人間関係作りを併せて推進する』と触れられています。より一層のパワハラ対策の気運が高まっています。」(平井さん)

「本来は、自らに潜むパワハラの芽に気づき、マネジメントスタイルの改善を促すことが必要です。しかし、自分事として聞いてくれない管理職が多く、パワハラしている人ほど、自分はパワハラに無縁だと思っている傾向が見られます。」(同)

部下を持つ管理職であれば誰でもパワハラのリスクがあることを覚えておかなければいけない。職務上の地位の優位性を背景に、適正な範囲を超えてしまうことがある。

「言動がいじめ目的ではなく、業務上の指導・注意・叱咤激励などの正当な目的であったとしても、言動そのものが本人にとって侮辱的であったり、精神的苦痛を与えたり、身体や雇用上の地位に害悪を与えるものもパワハラとなります。」(平井さん)

「職務上の地位を背景としたものであれば、行為は異なるものの、セクハラ、パワハラを起こす背景にある行動特性は共通します。」(同)

ここで、本診断がどのようなものか紹介したい。設問が36問のWeb検査であることから受験ストレスがない。また、結果を予測できない設問であることに驚かされる。

「40,000人が既に受検している行動価値検査データを元に作成しました。同検査は恣意的に回答しづらく、日本心理学会・教育心理学会でも論文発表される信頼性の高い検査です。受検者の行動傾向がパワハラを起こしがちな人にどのような点で似ているのかを数値やコメントで分かりやすく部下指導の留意すべきポイントも記載されます。」(平井さん)

適性検査の限界を理解する

一般的な適性検査では、管理職対象のハラスメント予防対象者が、研修やテキストで学習して事前に備える可能性は排除できない。そうなれば、対象者が自らを飾って回答する可能性もある。例えば以下のようなケースではどのように回答するか。

<いまの気持ちに正直にお答えください>
1.休日は外出することが多い
2.休暇が分かっている時には必ず予定をいれるほうである
3.スポーツは見るよりも実際にやってみたいほうだ

このような質問があり「いいえ」の回答をすると、社会性や社交性が低いと判断される。人事評価上、社会性や社交性を重視する場合、マイナス評価になってしまう。では、「はい」と答えれば、社会性や社交性が高いと評価されるが、実態とは異なる結果である。

いくら受験前に「いまの気持ちに正直にお答えください」と記載したところで、結果で不利益を被ると考えている人は多いので、なかなか正直には回答できない。このように多くの適性検査は結果を予想できるため精度上の問題がある。

本診断が上記のような恣意性をできるだけ排除しつつ、パワハラのメカニズムに着目している点は興味深い。採用時のデータ、その後の社内評価との相関性を見ていけば非常に興味深い結果が得られることだろう。なお、適性診断は全人格を測定するものではない。ある条件下によって導き出された結果であるため、限界があることも理解しなければいけない。

尾藤克之
コラムニスト
代議士秘書、コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。著書はビジネス書、実用書を中心に10冊。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)が発売後、1週間で重版。現在好評発売中。Twitter:@k_bito