【映画評】ワンダーストラック

2018年04月18日 06:00

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1977年のミネソタ。事故で母を亡くした12歳のベンは、母の遺品から、会ったことのない父の手がかりを見つける。それは「ワンダーストラック」というニューヨーク自然誌博物館の本で、本に挟まっていた書店のしおりを頼りに、ベンは父のことを探し始める。1927年のニュージャージー。厳格な父に育てられたローズは生まれた時から耳が聞こえず、孤独を抱えていた。ある日、ふたりはそれぞれの思いを胸にニューヨークへと向かうが…。

時代も場所も異なるところで生きる少年と少女が不思議な運命で結びつく壮大でミステリアスな愛の物語「ワンダーストラック」。1977年のミネソタのベンは、会ったことがない父を探すうちに落雷に遭い、その影響で耳が聞こえなくなってしまう。1927年のニュージャージーのローズは、生まれた時から聴覚に障害があった。共に音を失くしているという設定は、脚本の上手さのおかげで、最小限のせりふと忘れがたい映像美を生み出し、観客を魅了する。とりわけローズの幼い頃を無声映画で表現した描写は効果的だ。ベンとローズは、不思議な絆に導かれ旅をすることになるが、行く先々で驚きと幸せに出会うことになる。

原作は「ヒューゴの不思議な発明」で知られるブライアン・セルズニック。ファンタジックな作風だけにトッド・ヘインズ監督との組み合わせは正直、意外だったが、ニューヨークの街の全貌や歴史を教えてくれるジオラマの使い方などを見れば、納得がいく。さらに、自分の居場所と愛する人を失くして彷徨いながら、自ら壁を乗り越えていくという主人公たちの生き様は、ヘインズ監督がこれまで「キャロル」や「エデンより彼方に」で描いてきたテーマと合致するものだ。孤独を抱えていたベンとローズの“冒険の旅”は、最後に思いがけない形でつながり、人生のきらめきを見せてくれる。自身も聴覚に障害を持ちながら圧倒的な存在感を示したローズ役の天才子役ミリセント・シモンズの演技が心に強く焼き付いた。
【75点】
(原題「WONDERSTRUCK」)
(アメリカ/トッド・ヘインズ監督/オークス・フェグリー、ジュリアン・ムーア、ミシェル・ウィリアムズ、他)
(ミステリアス度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年4月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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