今だからいう熊本地震の復興支援の「感動」と「違和感」

2018年04月19日 06:00

地震で甚大な被害にあった熊本城(写真AC:編集部)

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

2016年の熊本地震が起きて今月で2年が経過しました。地震から2年が経過していることから、今回はまったくタイムリーな記事ではありません。そのため、もしかしたらこの記事のタイトルを見て、「え?今さら?」と思われたかもしれません。でも実は理由があって、あえてタイムリーでない時期に、地震発生当時に言えなかったことをこの記事で主張したいと思っています。

人生で2回経験した大地震

私はこれまでに2回大震災を経験しています。始めて大震災を経験したのは「阪神淡路大震災」、当時は大阪にいて夜中に直下型地震に見舞われました。あの時は地震発生の3分ほど前になぜかいきなり目が覚めてしまいました。「まだ夜中か…寝なおそう…。」そう思って目を閉じた瞬間に地震発生!揺れている間、何が起こったのかよく理解できませんでした。あれからもう24年が過ぎましたが、2階で眠っていた私の耳に1階の食器棚からお皿が滑り出てパリンパリン音を立てて割れていたことは鮮明に記憶に残っています。幸いに自分が住んでいる街はそれほどの被害が出なかったのですが、テレビをつけて変わり果てた神戸の街並みに「おいおい…これがあの神戸か!?これは現実の世界なのか!?」とまったく現実感がなかったことを覚えています。

その次は東京・千代田区にある会社で、会社員として働いている時期に東日本大震災に見舞われました。「ふせろー!!!」とフロアの本部長が叫び、私は慌てて机の下に潜り込みました。サーバーのPCが宙を飛び、肉厚のデスクにヒットして割れてしまいました。「これが人に当たっていたら…。」そう思うと血の気が引くのを感じましたね。地震発生後は電車が止まってしまい、私はフラフラと歩いて虎の門病院に漂着してそこで力尽きてしまいました。病院の対応はとても親切で、貸し出してくれたベンチのスペースで眠り、翌日動き出した電車で無事に帰宅しました。

そして2016年の熊本地震。私はその時、熊本を不在にしていたので直接地震を体験したわけではありません。仕事を終えて夜ネットでYahooニュースを見ていると「熊本で震度7の地震」とあって一瞬息が止まりました。驚きとショックで色んなことが頭をぐるぐる駆け巡りましたね。後から聞いた話ですが、私の経営するネットショップ肥後庵の会社がある熊本・植木は大震災で激しく揺さぶられ、従業員が悲鳴を上げて机の下に避難する状態と聞きました。一部のスタッフは自宅の水道管が壊れてしまい、大変な不便を強いられた話を聞きました。いても立ってもいられず、熊本へ行った私を待ち受けていたのは、変わり果てた街でした。

「応援されている」のは涙ぐむほど嬉しい

熊本地震により、当店の肥後庵も大打撃を受けました。肥後庵は熊本から日本全国にフルーツギフトを届けるビジネスですが、しばらくは当店から全国のお客様への発送が完全に止まってしまいました。「この先どうしたらいいんだろうか?」そう頭を悩ませていました。

しばらくして全国のお客様から電話がかかりはじめました。「地震大丈夫ですか?」「フルーツの到着が遅れても構いません。落ち着いてからでいいのでゆっくり発送してください」こうした安否を気遣う電話、メールが毎日次々と送られてきます。商品注文を頂いた際、注文備考欄に「地震大丈夫ですか?遠くからお祈りしています」「負けないで!頑張って!!」など書いてあり、その一つ一つに目を通している内に、気がつくと私は涙ぐんでいました。

メールや備考欄に書かれているのは励ましの一言。でもこの一言がなんとも胸に刺さります。お客様から「地震に負けるな!」と応援されている内に「これが人の温かさなんだ」と感じましたね。震災のダメージはかなりのものでしたが、お客さまの言葉で救われました。ありきたりな言葉でしか表現できない、自分の語彙力の乏しさが悔しい限りですが、「自分はお客さまに支えられてビジネスをしているんだな」と感謝の気持ちでいっぱいになりました。

「熊本地震」「復興支援」というキーワードを使わなかった理由

熊本地震当初、ネットを検索すると「熊本地震」「復興支援」というキーワードがネットに広がっているのに気づきました。このキーワードをうまく活用することで、強烈なマーケティングツールになります。「熊本地震の復興支援」というキーワードをショップやブログで全面的に使うことで「地震で困っている人たちを救いたい!」と思っている人や企業に届き、どんどん商品が売れていくでしょう。現にそうした売り方をしている業者を数多く見てきました。

でも私はあえて肥後庵のサイトやブログに「熊本地震 復興支援」といった売上に直接つながる言葉は一切使いませんでした。これが地震から2年が経過した今、この記事を書こうと思った理由です。

私が提供しているサービスは「フルーツギフト」。贈る人、受け取る人をギフトで幸せにするビジネスで、そこには復興支援が入り込む必要はないと思っています。「復興支援をキーワードに売上を上げたい!」「マーケティングに活用したい!」という気持ちは一切ありません。復興支援というのは確かにトレンドのキーワードかもしれませんが、そこに乗っかって売上を上げることは「地震で困っている熊本を助けたい」と思うお客さまの心をお金に買えている気がして私には出来ませんでした。

同業者の復興支援マーケティングの「違和感」

そんな風に思っていましたから、他の同業者であるネットショップが「復興支援セット」と称して、商品を売り出しているのを見て違和感を覚えました。これまで見たことがなかったショップがGoogle検索の上位に上がっていました。おそらく復興支援のトレンドの波にうまく乗ってSEO効果をあげたのでしょう。見ているとどうやらその復興支援セットはそこそこ売れているようです。

でも…私はこの行為が受け入れられませんでした。復興支援セットってなんでしょうか?「業者の俺たちを助けるセット」としか見えません。ビジネスとは「相手に価値を提供し、お金を頂く行為」じゃないですか?復興支援セットは確かに商品・サービスを通じて価値提供をしているのかもしれませんが、「復興支援を通じて俺たちを助けてくれ」と横柄で守銭奴な姿勢がどうしても嫌だなと思えてしまったのです。※売上の一部を寄付するなどの活動は別。

ビジネスの世界は結果がすべて。復興支援セットで売上をあげて生き残れば「あり」なのかもしれませんが、そんな一時的なトレンドに乗っかるやり方で、今後も長くお客さまに価値提供を続けられるんでしょうか?私はどうしても同じ事をしようとは思えませんでした。

支援への最大のお返しは「自立」

「熊本地震」「復興支援」といったキーワードを入れていなくても数え切れないほどの人から復興支援の一環としてのご注文を頂きました。ですので大声を出して「復興支援してください!」とお客様へ呼びかける必要はないと確信しました。

「復興支援の一環で注文をして頂くお客様が求めていること」、これって「震災に見舞われる前の元気な姿に戻って欲しい!」ということじゃないですか?大切な人が病気になれば元気になって欲しいと思うもので、熊本地震も同じく、多くの人が震災前の元気で明るい街に戻って欲しいと願っているのだと思います。

そうなると支援を受けている側としては「自立すること」が最大のお返しになるのかと思いますね!「おかげさまで地震から立ち直りました!もう大丈夫です」ということが支援をしてくれた方々にお返しできる最高のギフトだと思います。ネットを検索すると未だに「復興支援マーケティング」で忙しく集客している業者もありますが、それは震災で心を痛めてなんとか立ち直って欲しいと願ってくれる人の心に反しているとどうしても思えてしまいます。

長くなりましたが、震災から2年が経過した今、自分の考えを残しておきたいと思って書いてみました。

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黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

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