筆禍を防ぐための7カ条 --- 高橋 大輔

2018年04月28日 06:00

国政や自治体を問わず、政治家の不用意なインターネット発信が炎上を招き、非難の集中砲火を浴びるケースが多発しています。こうした事態は発信の矛先や当人を傷つけるのみならず、選挙で一票を投じた有権者にとっても不幸であることに他なりません。

害こそあれ、益をもたらさぬことは改めて申し上げるまでもないでしょう。

なぜ、政治家の筆禍や舌禍は後を絶たないのか。
議会開設より連続当選25回、衆議院議員在職63年の経歴を持つ咢堂・尾崎行雄の足跡から、いかにして筆禍を防ぐか。そのための7カ条を記したいと思います。

その1:公人の発信は「常に見られている」という意識を持とう

仮に政治家であるあなたがトイレで用を足していても、一日が終わって眠りに就いたとしても、そのインターネット発信は常にあなたの分身となって世に発信を続けています。

政治家だから、ではありません。立場や職責に関わらずインターネット上で発信するからには、「常に見られている」という自覚が欠かせません。

その2:世に出た後では、もう遅い。

仮にあなたが後になって頭を抱えるようなインターネット発信をしてしまったら。すべては「あとの祭り」です。
出してしまった以上は、世間の目に触れることを覚悟しましょう。
ツイッターであれブログであれ、はたまたフェイスブックであれ。投稿するという行為は、世間の耳目にみずから己をさらすことと同義なのです。
その覚悟はない政治家は、即刻すべてのインターネット発信を止めたほうがよいでしょう。

その3:その発信は、果たして一刻を争うものだろうか。

巷間よく言われるのが「夜中に書いた手紙は出すな」という金言です。
絶対とは言えませんが、
日中に読み返すと数多くのNGを見つけられるケースが少なくありません。
夜中に限らず、少し酔いが回っている時や、感情が昂ぶっている時の発信はお勧めできません。
もしもその発信が急を要するものでないならば。せめて一晩、寝かせましょう。炎上に比べたら安いものです。

その4:予定稿のすすめ

もしも翌日の発信でも間に合うのならば。政治家の皆様には「予定稿」をお勧めします。
ツイッターではできませんが、最近のブログやFacebookでは投稿時間の予約セットが行えます。
よほどの急ぎでもない限りは、たとえ僅かでも発信までの冷却時間を置いた方が炎上防止や推敲の面でもお勧めです。

その5:どうしても発信せずに要られないときは

これは
「憲政の父」尾崎行雄に学ぶところ大ですが、徹底的に発信内容を練り上げる、これに尽きます。
たとえば尾崎は、人の命に関して演説や発信を行う際、その軽重のたとえとして軽は「権助の首くくり」を、そして重は楠正成の自害を自らの著書『人生の本舞台』でも並べました。

その違いは各々の由来を紐解く必要がありますが、それでもこうした「言葉を練る工夫」が、先人たちの時代にはありました。

尾崎のみならず、憲政史に「腹切り問答」で名を残す濱田国松や、「粛軍演説」「反軍演説」で知られる斎藤隆夫なども、自らの言葉に誇りを持ち合せていました。
現在は哀しいかな、自らの言論に対する誇りを感じられる議員が少ないように思えてなりません。

その6:それでも「舌禍」を防ぐのは難しい

尾崎行雄は衆議院の連続当選25回、議員在職63年の記録を持ちますが、少なくとも筆、今でいうところのオピニオン誌への寄稿やインターネット上での発信に関しては相当の慎重居士でありました。

その尾崎をもってしても、第1次大隈重信内閣で文部大臣を務めていた際の「共和演説事件」、あるいは翼賛選挙における同志の応援演説で引用した川柳「売家と唐様で書く三代目」では軍部の批判により、罪を着せられ、言われなき投獄の憂き目に遭いました(のちに尾崎は上告し、大審院で無罪)。

どれだけ慎重を期しても、政敵が存在する以上は舌禍にも最大限の注意を払う必要があります。

その7:最後に、ネット時代を生きるすべての政治家の皆さんへ

至るところに週刊誌はじめメディアの目が光る現在、どんなに些細な発信でも不用意な発信が思わぬ炎上や波紋を呼ぶことは免れません。けれども、それに憶していたらもはや「貝」になるしかありません。

これだけ政治家の発信が炎上の元となる現在ではありますが、政治家の発信は炎上にせよ沈黙にせよ、どちらも国益に資するものではないと日々痛感しています。

政治家の皆さんはその発信において、畏れと同時に「それでも発する」覚悟をもって、大い発信していただきたい。
そのためには、ぜひとも上記の7カ条を心のどこかに留めていただけることを願ってやみません。

当然ながら、尾崎行雄の時代にはインターネットなどは存在しませんでした。
その一方で、尾崎のみならず明治から大正、昭和期の政治家は自らの命を懸けて自らの信条を訴えてきました。
5.15事件で命を落とした尾崎の盟友・犬養毅しかり、2.26事件で凶弾に倒れた高橋是清。
更には第一次大戦期の世界恐慌をみずからの弁論で国民への説得を試みた浜口雄幸しかりです。

そうした気概や覚悟といったものには、現代の国会議員や自治体議員の皆さまも何かしら学ぶところがあるのではないでしょうか。

高橋 大輔 一般財団法人尾崎行雄記念財団研究員。
政治の中心地・永田町1丁目1番地1号でわが国の政治の行方を憂いつつ、「憲政の父」と呼ばれる尾崎行雄はじめ憲政史で光り輝く議会人の再評価に明け暮れている。共編著に『人生の本舞台』(世論時報社)、尾崎財団発行『世界と議会』への寄稿多数。尾崎行雄記念財団公式サイト

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