国債の決済T+1が始動、これにより日銀の国債買入がさらにスムーズに

国債など有価証券の取引には約定日(売買した日)と決済日(資金と証券の受渡日)が存在している。この関係は国債の入札日と発行日の関係にもあたる。つまり売買を行った日と別に決済日・発行日が存在している。

国債の決済に関しては、2012年4月23日約定分から「T+2」に決済を行うようになった。つまり売買約定日から起算して原則3営業日目の日に受渡し決済を行っていた。

この決済期間が5月1日から「T+1」に短縮された。つまり約定日から起算して原則2営業日目の日に受渡し決済を行うことになる。

なぜ国債の決済期間を短縮しなければならなかったのか。これについては主導した日本証券業協会のサイトなどでも確認できる。大きな要因としては「リーマン・ショックで顕在化した国債決済リスクの削減」ということになる。また、「国債市場・短期金融市場の流動性・安定性・効率性の向上」も目的としている。さらに「国際標準手法の導入を通じ国債のグローバル化に対応」ともある。簡単にいえば最も流動性の高い米国債の決済がT+1であり、日本国債もそれに揃えようとの動きと言えた。

国債の入札も財務省と業者の国債の売買契約となるため約定日ということになり、それとは別に発行日(受渡日)が設けられている。これは約定日と決済日の関係と同じである。今回の国債の決済期間の短縮によって、国債の入札から発行までの期間も短縮される。

これまで5年債、10年債、20年債、30年債については入札日を含めた3営業日目の日(T+2)が発行日となっていた。これがT+1となる。ただし、3月、6月、9月、12月のいわゆる国債の償還月については、20日が発行日となっていた(20日が休日の場合は翌営業日)。償還月の発行日が20日となっているのは、償還を迎えた国債への再投資を円滑に進めるなどの理由があった。ただし、これだと入札日から発行日までの期間が大きく空いてしまうことになる。

償還月の発行日が20日となっていることで、実は日銀の国債買入にも影響が出ていた。日銀は発行されていない国債を購入することはできない。つまり発行日を過ぎないと買入対象とならないのである。償還月に際しては20日まで日銀が買入対象にできないため、国債を入札した業者は期間リスクを負うことになる。

しかし、今後は償還月でも発行日は入札翌営業日となることで、業者の負担が軽減される。ただし、2年債についは5月入札分(31日入札)から翌月1日発行とし、これまでの翌月15日から約2週間程度前倒しされる。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年5月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。