金正恩の再訪中を裏読み:日中韓首脳会談に日本はどう臨むべきか

宇山 卓栄

新華社より引用:編集部

中朝「蜜月」は本当か?

金正恩委員長が8日、中国を再訪問し、習近平主席と会談した。メディアは「米朝首脳会談を控え、北朝鮮が中国との蜜月関係をアピールする戦略」と一斉に報じている。「アメリカの強硬路線が効き、金正恩が焦っている」とする見方も多くある。

しかし、このタイミングで再訪中したことについて、北朝鮮と中国の関係をもう一度捉え直すことが必要になっていると思う。我々にとって、両者の関係は「蜜月」ように見えるけれども、意外にも、実態はそうではないのかもしれない。

来る米朝首脳会談にあたり、習近平が金正恩に何かを確認した、或いは、金正恩が習近平に何かを確認した、このいずれかの必要性において、8日の中国大連での首脳会談は行われた。

「蜜月」をアピールするためだけならば、もう充分にできている、今更、わざわざ、両首脳が会う必要はない。両者の間で、合意しておかねばならない交渉課題があり、その折衝が続いていたか、まだ現在も続いているというように見るべきではないか。

中国外務省は、8日の首脳会談について、特に発表すべき声明はないという。

焦っているのは北朝鮮か、中国か?

中国の王毅外相は3日、平壌に訪れ、金正恩と会談し、「蜜月」をアピールした。この時に、何らかの交渉課題を中国側が北朝鮮に圧力をもって提示し、8日の首脳会談に繋がったように見える。つまり、中国は北朝鮮という狂馬の手綱を握ろうと必死なのだ。

もう一つ大事なことは、8日の首脳会談が中国側が要請したものなのか、北朝鮮側が要請したものなのか、これによっても見方は大きく変わる。

3月の金正恩の電撃訪中は中国側からの要請であったと、ほとんどの識者は見ている。例えば、李相哲龍谷大学教授はその見方で間違いないと述べておられる。

8日の首脳会談も、前回と同じく、中国側から要請されたものと捉えるならば、習近平が金正恩に何かを確認しなければならない事柄があったという観測が成立し、そのことが中国に「狂馬の手綱を握る」ことを確証させることになっている。

未だ、中国は北朝鮮を掌握し切れていない。これは間違いない。昨日の首脳会談は「金正恩の焦り」以上に「習近平の焦り」の方が色濃く映る。

日本は超然としていればよい

9日の日中韓首脳会談前に、金正恩は習近平に自分たちが有利になるよう、働き掛けを頼んだ可能性もある。

中国と北朝鮮が「蜜月」であるとする一般的な捉え方に対し、両者の疑心暗鬼の溝が未だ埋まっていないと捉えるならば、日本としては中国に対する交渉の幅は大きく拡がる。両者の微妙な不和の隙を突きながら、毅然として中国に対応すればよい。

中国は様々な譲歩を求めてくるであろうが、日本は「拉致・核の包括的解決がなければ協力しない」という従来の方針を貫くだけのことだ。中国や韓国などの誘いに一切、悪乗りしてはいけない。超然としていればよい。(また、「日本が蚊帳の外」だと騒ぐ人はいるだろうが)

金正恩はついこの前まで、中国を「千年の宿敵」と呼び、毛嫌いしていた。狡猾な中国としても、北朝鮮とは容易に組まないのは言うまでもない。韓国の文在寅大統領は喜んで北朝鮮と組んでいるが、彼は例外的な存在である。まともに相手にする必要はない。