相手の名前を憶え、何度も口にしよう:コミュニケーション能力を磨く③

洋の東西を問わず、人は「他人が思っているより遥かに」自分の名前にこだわるものだ。
あなたがそれを確認しようと思えばすぐにできる。

職場でも私的な場でも、誰かの名前をわざと間違えて呼んだり、名前の漢字をわざと間違えて書いてみればいい。自分の感情に正直な人であればあるほど、不快感をあらわにするはずだ。

私自身、社会人になりたてのころ、某女性社員の名前の漢字を間違えて書いてしまった経験がある。

普段にこやかな彼女から、「この名前、私自身気に入っているので、間違わないでください」と冷淡な口調で言われたときは、本当に冷や汗が出た。

間違えないようにするには、正確に憶えることが第一だ。
実は、私はこれが最も苦手で、いまだに効果的な方法を見出すことができない。

故田中角栄元首相は、会う前から相手のフルネームと略歴を暗記しており、それが彼の人心掌握術の一つだったと言われている。即効性のある方法を私は知らないので、本稿では「繰り返しひたすら暗記する」としか書きようがない。

いい方法があれば、是非ともご教示いただきたい。

一度会った相手の名前を憶えるコツは、話している最中に何度も相手の名前を口にすることだ。

「鈴木さんはどちらにお住まいですか?」「さすが、鈴木さん、よくご存じですね」「これ、いかがですか鈴木さん」というふうに、相手の名前を何度も口にすることによって憶えることができる。

また、名前を何度も口にすると相手から好印象を受けるという効果もある。
私は銀行員時代、「相手の名前を繰り返し口にしなさい。ほとんどの場合、名前はその人の耳に心地よく響くものだ」と支店長に教えられ、それを続けてきた。

弁護士になって、初めての人から法律相談を受ける時、「こんにちは佐藤さん。今日は金銭問題のご相談とのことですが、詳しいお話を聴かせていただけますか?」という具合に、笑顔を見せながら必ず相手の名前を口にするようにした。

一般の人たちにとって弁護士というのは馴染みがなく敷居が高い(弁護士数が急増した今ではそうでもなくなったかもしれないが…)。笑顔を見せて名前を呼んで相手の緊張を解きほぐすのが、きちんと相談を受けるための前提条件だと考えている。

そういえば、私の近所の整形外科の先生も患者さんの名前を頻繁に口にしている。
「荘司さん、ちょっと両手を前に出してくれますか?」「はいいいですよ、荘司さん」…という具合だ。

少々“いかつい”顔をしている先生だが、彼に親しみを持っている患者は私だけではないだろう。

私は年に一度行くかどうかという程度なので、カルテを見てしっかり名前を確認しているのだろう。

名前をきちんと憶えて会話の際には頻繁に口にする。
たったこれだけを習慣化するだけで、あなたのコミュニケーション能力は飛躍的に向上するはずだ。

説得の戦略 交渉心理学入門 (ディスカヴァー携書)
荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年5月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。