ドル円は113円、米長期金利は4%、原油先物は80ドルに向けて上昇か

18日の外為市場でドル円は今年1月以来の111円台回復となった。その後、イタリアの政局が不安視されたこともあり、リスク回避の動きから円が買われたことで、いったん110円60銭あたりまで下落した。しかし、21日には再び111円台を回復させており、ドル円の上昇基調は継続している。

ドル円の目先の節目となりそうなのが、今年初めの水準でもある113円台か。ドル円の上昇要因のひとつが米長期金利の上昇となっている。17日の米国債券市場で、米10年債利回り(長期金利)は3.11%と2011年3月以来の水準を付けた。2011年2月には3.5%台をつけていることもあり、ひとまず3.5%が目先の目安となる。しかし、トレンドラインを上抜けしていることもあり、チャート上からは米長期金利が4%に接近してくる可能性もないとはいえない。

米長期金利の上昇の背景にあるのが、FRBの正常化に伴う利上げとなる。しかし、中短期債が利上げを織り込んで上昇してきても、長期金利は物価の上昇が抑制されていたこともあり上昇ピッチが鈍かった。このため米国の長短金利差が縮小した。ところが原油価格の上昇もあって、物価の上昇観測も出てきたことから、長期金利も3%と言う大きな節目を抜いてきた。

米国の物価の押し上げ要因となりそうなのが原油価格の動向である。原油価格の指標とされるWTI先物は70ドルの大台を回復した。こちらも指標となっている北海ブレント原油価格が、2014年以来初めて80ドルに上昇した。イランを巡る中東情勢への懸念も原油価格の上昇要因となっているが、そもそものOPEC等の減産による需給バランスの改善が進んでいることが背景にあろう。そこには米国を主体とする世界的な景気改善による需要の改善も影響ししている。

原油高とそれによる米長期金利の上昇、それによるドル円の上昇という「風が吹けば桶屋が儲かる」的なシナリオが、果てしてどの程度まで続くのか。この動きを阻害する要因はあるのか。

中東でのイランを巡るリスクに加え、欧州ではイタリアの五つ星運動と同盟による連立政権の樹立によるイタリア財政の悪化も懸念材料となってきている。また、米朝首脳会談は本当に実現可能なのかという懸念もある。そもそも米国を主体とする景気の改善は今後も続くのかとの疑問もある。

当然ながら景気には波がある。日本の景気についても今年1~3月期GDPがマイナス成長となり、4月の日銀短観では景況感が悪化していた。しかし、これで景気回復のサイクルが終了したとの見方も、いまのところは早計かと思われる。

原油価格の上昇を受けても物価が過熱することもなく、これはむしろ息の長い景気の回復を可能にするのではなかろうか。米国では中間選挙を睨んでトランプ政権は景気の回復に躍起になることも予想される。トランプ政権そのものがリスク要因に見えなくもないが、いまのところは期待が懸念を上回っているように思われる。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年5月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。