ドイツで難民不正認知問題が浮上

2018年05月25日 11:30

ドイツ連邦移民難民局(BAMF)のブレーメン出張所で2013年から16年の間、少なくとも1176件の難民認知で不正問題があったことが発覚、不正手続きで難民資格を得た者の中にはイスラム過激派グループとの関与が囁かれる者もいた可能性があり、メルケル政権の難民政策に対する国民の信頼は大きく揺れてきた。

▲BAMF不正問題の対応に苦しむゼーホーファー内相(2018年5月23日)独「キリスト教社会同盟」(CSU)公式サイトから

▲BAMF不正問題の対応に苦しむゼーホーファー内相(2018年5月23日)独「キリスト教社会同盟」(CSU)公式サイトから

ブレーメン出張所が正式の難民申請手続きなく難民の認知資格を付与していたことが公けの場で明らかになったのは今年4月20日。ホルスト・ゼーホーファー内相(「キリスト教社会同盟」CSU所属)は5月22日、難民認知不正問題を事前に知っていた可能性があるとして、ユッタ・コルド(Jutta Cordt)BAMF長官を含むBAMF関係者の捜査にも乗り出す意向を明らかにしたばかりだ。

独週刊誌シュピーゲルによると、ブレーメンのBAMF出張所所長、ウルリケ・B(Ulrike B)は管轄外の難民認知問題にもかかわらず、数年間にわたり不正の難民認知を行っていたという。ブレーメン検察局はBと5人の関係者(弁護士、通訳者も含む)に対して賄賂と職権乱用などの容疑で不正捜査を始めた。

発覚した最初の不正難民認知ケースは、2013年11月8日に遡る。2人のヤズィーディー教徒の難民がオルデンブルク出張所(ニーダーザクセン州北西部)で理由なく難民申請が却下されたことを受け、担当弁護士が裁判に訴えた。その翌年、管轄外のブレーメン出張所が2人の難民認知を行っていたことだ。

オルデンブルク出張所の通知を受け、ニュルンベルク(バイエルン州)のBAMF本部は14年7月11日、調査に乗り出し、Bが過去、多くの難民に不正認知していたことが判明した。ちなみに、連邦内務省のオンブズマンが16年1月25日、ブレーメン出張所の不正に関する匿名のメールを受け取っている。当時調査対象となった件数は26件だけだった。16年7月、Bは職務を解任され、その1年後、停職処分を受けている。

連邦内務省は今月23日、ブレーメン出張所は今後一切、難民認知には関わらないことを決めている。ゼーホーファー内相はブレーメンの件で議会調査委員会の設置を示唆し、「失った信頼を取り戻すために全ての処置を講じる」と述べている。

BAMFはブレーメン出張所の不正問題を契機に、2000年までブレーメン出張所が発行したポジティブな難民認知1万8000件の調査に乗り出している。これまでの結果によると、1500件中、約40%に不正が見つかったという。

なお、コルトBAMF長官 は「昨年10月26日、内務調査部を設置し、ブレーメン出張所の不正問題の捜査に乗り出してきた」と説明、不正問題を知りながら対応しなかったという批判に反論している。
ブレーメン出張所の難民不正認知問題が拡大の様相を深めてきたことを受け、野党の自由民主党(FDP)と右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)は議会内調査委員会の設置を要求。FDPのマルコ・ブッシュマン議員は、「調査委員会で事件の全容を解明する必要がある」と主張。左翼党は委員会の設置に反対する一方、「同盟90/緑の党」は党としての方針をまだ決めかねている、といった状況だ。

メルケル首相の難民歓迎政策をこれまで厳しく批判してきたゼ―ホーファー内相はブレーメン出張所の不正問題の件では首相批判を控えている。その理由は、①CSUが政権政党であり、メルケル首相攻撃は政権へのイメージダウンに繋がる、②10月14日にバイエルン州選挙が実施される。難民不正認知問題は野党のAfDに有利に働く可能性があるだけに、問題の過熱化を避けた方が無難、等の2点が考えられる。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年5月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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