免疫チェックポイント抗体療法の効果に男女差⁈

2018年05月26日 11:30

シカゴ―東京―シカゴ―メキシコシティー―シカゴの長旅が一昨日ようやく終わった。先週の土曜日午後にシカゴに戻り、日曜日の朝にシカゴ発でメキシコに向かった。東京―メキシコシティー間には直行便がある。シカゴ―東京―メキシコシティー―シカゴにすると、より体に優しく、シカゴでの入国審査が1回少なくなるのだが、航空運賃が1.5倍以上になるので、一旦シカゴに戻ることにした。

幸いにも、シカゴ2回・メキシコシティー1回の入国審査の待ち時間がすべてゼロという幸運に恵まれた。東京から直接メキシコに来た仲間は、私のシカゴからのフライトより20分ほど遅く着いただけだったが、入国審査に1時間近くかかったとのことだ。長時間のフライトの後の長い列の入国審査は、疲労感を倍にするが、今回はあり得ない奇跡が起こった。

メキシコでは2日間、元駐日メキシコ大使夫妻と夕食を共にした。奥様が研究者で、東大の私の研究室に在籍していたことがあり、今回は奥様からの招待だった。メキシコ外務省幹部のご主人と話をした時に、突然、「人工知能が重要だ」という話が飛び出し、話が弾んだ。外交官の彼から「人工知能が語られる」偶然とは恐ろしい。私が、人工知能ホスピタルの話をすると身を乗り出して聞いていた。前回、ご夫妻とメキシコで食事をしたのは、2016年11月6日、米国大統領選挙の日であった。クリントンが当選するから大丈夫と始まった食事だったが、選挙結果を見ながら、元駐日大使の顔色が次第に曇ってきたことを鮮明に覚えている。

そして本題だが、Lancet Oncology誌に「Cancer immunotherapy efficacy and patients’ sex: a systematic review and meta-analysis」という論文が公表された。20論文の11,351名の進行がん・再発がん患者のデータを解析し、免疫チェックポイント抗体治療効果の男女差を調べた結果である。7646名が男性、3705名が女性で、3632名がメラノーマ、3482名が非小細胞肺がんであった。男性患者の免疫チェックポイント抗体療法の死亡リスクはコントロールに比して0.72であったのに対し、女性患者の免疫チェックポイント抗体療法の死亡リスクはコントロールに比して0.86であった。結論を一言で言うと、明らかに男性患者の方が効果が有意に高かったことになる。

自己免疫病は、一般的には女性に多いことが知られており、男女間の免疫環境が異なっているのは明らかだ。妊娠時には、大きく免疫環境は変化するし、この男女間の差が、免疫チェックポイント抗体の差に現れているのかもしれない。

肺がんの場合、EGFR遺伝子に異常がある場合、EGFR遺伝子の変異がない症例に比して免疫チェックポイント抗体の効果が低いことがわかっている。EGFR遺伝子に異常のある症例は、女性・非喫煙者に多く、これらのがんでは、喫煙者の肺がん(男性に多い)に比べて、遺伝子異常が少ない。免疫チェックポイント抗体治療は、遺伝子変異の多いがんにより効果が高いことが知られているので、非小細胞肺がんの場合、女性のがん=遺伝子異常が少ない、男性のがん=遺伝子異常が多いことが免疫チェックポイント抗体の効果の差につながっていることでも説明できそうだ。頭頚部がん、膀胱がんも同じ理由で説明可能かもしれない。

論文の結論には、女性の免疫療法に関して別のアプローチが必要だと書かれていたが、ホルモンなどを含めた免疫環境の問題なのか、単なる遺伝子異常数の差なのか、このあたりを明らかにしなければならない。

と、時差ぼけの頭を振り絞って書いたが、世の中は幸運ばかり続かないものだ。衣類を洗濯しようと、洗濯機のドアを閉めて、スイッチを入れたが、ONにならない。シカゴ生活残り3週間の今頃、どうしてだ!最悪は、ドアも開かなくなり、衣類も閉じ込められたままだ。下着は1日分しか残っていない。洗濯機を蹴っても、殴っても、ドライバーでこじ開けようとしても、ドアは開かない。前のオーナーが買ったドイツ製の洗濯機で、電源が入らないとドアが開かなくなっているようだ。必死でどこかにあったはずのマニュアルを探し出し、読み始めようとするが、字が細かすぎで読めない。メキシコに持っていったメガネは、壊れたので捨ててきた。予備のメガネは前回すべて日本に持ち帰った。老眼の目には判読不可能だ。大学のオフィスにはあるが、車も売り払ったし、外も暗いので、一昨夜はここで断念。

昨夜メガネを持ち帰り、それで見ても細かい字を必死で読み、ドアの開け方の部分にたどり着く。どうして、こんなに複雑なのだと腹立たしく思いつつも、何とかドアをこじ開ける。しかし、昨夜は力尽き、ここで終了。今日は早い目に帰って、マンション内のランドリーに行き、洗濯しないと、明日の下着がない。忙しい時に、トホホ……だ。


編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2018年5月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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中村 祐輔
医学者、内閣府SIPディレクター

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