バロンズ:金融市場、地政学的リスクを静観か

2018年05月28日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは世界で最も優秀な最高経営責任者(CEO)30名を挙げる。1~3月期の決算で、S&P500構成企業の1株利益は前年比25%増を果たし、2010年以来で最大の伸びを遂げた。世界経済も、力強く拡大しているように見える。そのような状況下、優秀なCEOは明日の成長へ繋げるため、現金を有効活用するに違いない。今年で14回目を迎える世界で最も優秀なCEO30人のリストに入った面々のうち、ジェフ・ベゾス氏(アマゾン)、ラリー・ペイジ(アルファベット)、クラウド事業に進出し成功を収めるサティヤ・ナデラ氏(マイクロソフト)などIT企業から5人入った。その他のCEOの面々とリスト入りした背景は、本誌をご覧下さい。

米株にとって真の危機とは―The Real Danger for Stocks.

金正恩委員長にアマゾンの音声認識システム”エコー”を与えることは、良い考えではないか。”エコー”を通じて、米朝首脳会談を前にトランプ大統領に何を要求するかが分かるためだ。しかし、シンガポールで6月12日に開催される予定だった米朝首脳会談を前に、金委員長は核放棄の後に政権崩壊したカダフィ大佐のケース、いわゆる”リビア方式”という言葉を聞いたかのようだ。北朝鮮側が24日に友好的でない見解を表明(崔善姫外務次官は同日、ペンス副大統領の言動を「愚か」と非難、外交での失敗が「核による最終決戦」につながると警告)、トランプ大統領は同日に米朝首脳会談の中止を発表した。トランプ大統領はいつもの通り、実りのない結果をもたらす前に交渉の場から去ったように見えたが、足元では再び米朝は対話を再開しつつある。

翻って米中間は、通商協議が妥結したものの、未だ緊張関係にあるといっても過言ではない。米国は23日、環太平洋合同演習(リムパック)への中国に対する招待を取り消し。イランへの禁輸措置に反した中国通信機器メーカーのZTEをめぐる対応についても、応酬が続く。

金融市場は、このような地政学的に混沌とした状況に慣れてきたようだ。貿易戦争や軍事衝突などは、年初にリスク資産がFedの利上げペース加速をにらんで急落したほど、脅威でないように見える。

ウォーレン・バフェット氏はかつて、流動性という潮が引いた後に誰が裸で泳いでいたかが分かると発言した。RDQエコノミクスのジョン・ライディング氏とコンラッド・デクアドロス氏は、顧客向けのレポートで、”裸で”泳いでいた債務国”の一つにトルコを挙げる。トルコと言えば、300bpの利上げを経ても通貨リラの急落が止まらない。アルゼンチンも国際通貨基金(IMF)への支援要請の後、ペソ安に直面している。ベネズエラも経済危機から脱却できる兆しを見せていない。さらにイタリアでは、ポピュリスト政党の政権発足でユーロ懐疑派の財務相が就任するリスクを見据え伊10年債利回りは上昇、一時2.4%をつけた(ただし、欧州危機時の2011年に記録した7%超えには程遠い)。米国がメモリアル・デーの3連休に入る直前の25日、格付け会社ムーディーズはイタリアの格付けをジャンク債まであと2段階の水準である「Baa2」から見直すと表明した。

リスク資産からの資金流出を受け、安全資産とされる米国債と独国債に資金が流入中だ。米10年債利回りは3%以下で終了したわけだが、ハト派寄りのFOMC議事要旨も利回り低下に貢献した。結果、年4回の利上げ確率は後退している。一連のヘッドラインを受け、ダウなど主要3指数は上昇して週を終え、その間にアマゾンやネットフリックスの時価総額は過去最高に到達し、ウォルト・ディズニーを超えた。

ダウ、ニュースに上下しながら堅調な推移をキープ。

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(出所:Stockcharts)

地方債市場は、米債市場のような恩恵を受けていない。地方債のクローズ型投資信託(CEF)のパフォーマンスがさえない理由は、米債利回りの上昇にあり、地方債がつれ安となった公算が大きい。またCEF独自の理由もあるだろう。CEFは決まった口数で発行され、基準価額を上下するが、下落局面ではプレミアムが消えディスカウントが広がり、2017年のケースに陥りやすい。CEFが不振であるもう一つの理由は、多くが短期金利の借入を通じた資金が流入している点が挙げられる。Fedの利上げで流動性が低下すれば、さらに煽りを受けそうだ。


結局、今回のコラムで何が金融市場にとって真のリスクが何かを明確に指摘しておらず、読者から「先週のレビュー」のタイトルへ変更すべきと辛らつな意見が聞かれています。筆者も訳しながら、首をひねっておりました。一つ明確な点は、米株の方向性が読みづらいということでしょう。地政学的リスクや貿易戦争の脅威が意識され、トルコやアルゼンチンがキナ臭くても、相場は大崩れせず、むしろ下落局面では200日移動平均線を中心にテクニカル的な節目がサポートとして機能し続けるだけに、コラム執筆者のフォーサイス氏は2017年の経験に従い、悲観的トーンを明示できないのでしょう。

(カバー写真:shanmuga varadan asoka/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年5月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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