二代目「新緑」取材団が命名150年の北海道へ

2018年05月30日 11:30

昨年、九州で環境保護取材ツアーを行ったのに続き、今年は命名150年を迎えた北海道に学生6人を引率する。今夜は上海で一泊し、明日早朝、札幌に向かう。二年連、日本取材ツアーを実現できたのは、学生の日本に対する関心、大学の国際化理念に負うところが大きい。学内でただ一人の日本人教師として非常にうれしく思う。


チームの名前は、昨年使った「新緑」を引き継いだ。「新緑」は、中国の詩人によって好まれた主題で、日本の詩にも多く詠まれている。さらに「新」は大学の専攻にかかわる「新聞(ニュース)」の「新」である。「新緑(xīn lǜ シンル)」は中国語で、心拍を意味する「新率」と同じ発音で、生命の躍動にもつながる。今の季節にもピッタリで、申し分のないネーミングだ。

日中韓首脳会議のため来日した李克強首相がつい先日、北海道をしたばかりである。私たちの北海道計画は昨年は秋からスタートしてので、中国の首相訪問とはまったく関係なく進行してきたが、偶然とはいえ、私たちにとっては追い風となった。しかも、李首相が、高齢化社会への対応や、北海道の基幹である農業のハイテク化に関心を示したが、いずれも学生たちが選んだ主要な取材テーマと重なっており、メディアへの出稿がしやすくなった面もある。政治の風を重んじる中国において、中央指導者の意思表示は決定的な意味を持つ。

学生たちと計20回にわたって討議を重ね、絞り込んだ主な取材テーマは以下のとおりである。

1、日本の大学祭とは、その意義
北海道大学の大学祭が60周年を迎えた。模擬店を中心とした楡陵祭、留学生が母国の郷土料理を販売するInternational Food Festival(IFF)に加え、各学部・学科の特色を活かした催し物を行う8つの学部・学科祭を柱として構成される。外部から多数の来客を招く大学祭の意義を探索する。

2、高齢者介護とAI
公益財団法人テクノエイド協会(Association for Technical Aids)が行っている先進技術を取り入れた身体的、精神的な介護支援活動を通じ、高齢化社会におけるAI活用の将来性を探索する。

3、職人文化と地域の発展
かつてニシン漁で栄えた港湾都市の小樽市は、戦後、石炭需要の減少などによって衰退したが、ガラス工芸などの職人芸を伝える観光都市として復活した。また、アイヌの伝統工芸を生かした地域振興も成果を上げている。伝統的な職人文化の現代的意義を探索する。

4、現代農村と人の共生
ハンディを抱える人々が、労働を通じて、一緒に生きることの意味を考える試みが、北海道新得町の共働学舎で行われている。現地を視察し、代表の宮嶋望氏からこれまでの取り組みを聞く。

5、公共交通と地方振興
北海道の人口密度は全国最低の約65人/㎢で、全人口の3割以上が札幌市に集中している。しかも炭坑や林業の衰退で、地方は公共交通機関を維持するための深刻な財政危機に見舞われている。十勝夕張線は2019年に廃線、バスへの転換が決まった。一方、北海道新幹線は開業2年を迎え、札幌までの延伸への期待が語られている。

6、農村ツーリズムの可能性
北海道は自然豊かな農村の景観を生かしたグリーン・ツーリズムで多くの成功実績を持っている。先進的な取り組みをしている富良野や美瑛を実地調査し、中国でも開発が進む「農家楽」の参考とする。

7、森林保護と景観
北海道十勝の「千年の森」で、人間の時間軸ではなく、自然の尺度で景観をデザインし、新しいライフスタイルを提案する高野文彰氏との語らいを通じ、人間と自然との共生を考える。

どこまで中身のある取材ができるかは、学生たち自身の熱意にかかっている。私はそれを後押しする役割を担う。明日からの奮闘が楽しみだ。

本日、授業のある私よりも一足早く上海入りした女子学生6人は、半日、上海の浦東観光を楽しんだ後、合流した私と会議をしたところだ。今はもう寝ていることだろう。新品のパスポートを手に、初めての海外となる彼女たちの目にどんな日本が、どんな北海道が映るのだろうか。10日間の旅が始まった。


編集部より:この記事は、汕頭大学新聞学院教授・加藤隆則氏(元読売新聞中国総局長)のブログ「独立記者の挑戦 中国でメディアを語る」2018年5月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、加藤氏のブログをご覧ください。

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加藤 隆則
汕頭大学新聞学院教授、元読売新聞中国総局長

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