真の「働き方改革」には、サラリーマン優遇税制の修正が必要だ!

昨今「働き方改革」が盛んに論じられている。
おそらくその背景には、世界的な構造変化が目の前に迫っていることが背景にあるのだろう。

IT革命によって、企業間の世界的水平分業が可能となり、米国の高収益企業の多くは世界的水平分業システムを採用している。ブロックチェーンが普及すれば、企業間の水平分業が個人間の水平分業まで波及する可能性が高い。

米国では、既に多くのフリーエージェントによる水平分業が行われており、来たるべきブロックチェーン時代への備えは万全だ。

しかしながら、日本では相変わらず、新卒採用、年功序列、年功賃金というひとつの会社で階段を登っていく縦組織が主流だ。

それだけが原因ではないが、日米の有力企業の収益力には、顕著な差が生じつつある。

従業員1人当たりの時価総額や利益等で比較すると驚愕するばかりだ。

このような事情から、個々人として独立して生産的な労働を可能にするのが、真の「働き方改革」の目的だと私は考えている。そのためには様々な旧来的な制度を変更する必要がある。税制もそのひとつだ。

現代の日本の税制は、終身雇用サラリーマン等に最も適合するよう組み立てられている。
給与所得控除が存在し、最大2200万円まで非課税という退職金控除がある(いずれも米国では存在しない)。
税法の大原則は申告納税方式であるに関わらず、ほとんどのサラリーマンは源泉徴収で税金を納めており、痛税感をあまり持たずに生活している。

これらの制度は、一生大組織の一員として生活していくサラリーマン等に最も適した制度だが、個々のフリーエージェントとして働くには適さない。

昨今、給与所得控除の縮小が決められたが、退職金控除は手つかずだ。
莫大な退職金を手にするまで会社にしがみつこうとするのが人情だ。

個人としての活躍を期待するなら、退職金に対する税の超優遇も見直す必要がある。

また、フリーエージェントとして働くのであれば納税申告も必要となる。

今のうちから少しずつ申告納税制度に移行していくことが望ましい。
確定申告に必要なソフトはたくさんあるので、社内で研修を受けて「お助け部署」をつくればスムーズに移行できるだろう。

サラリーマンも自営業者も、個人は暦年単位の所得に課税される。
フリーエージェントになると、ある年に大儲けをして翌年には大赤字(その逆)ということもある。

このあたりは難問だが、所得税率を下げつつ資産税をじわじわと導入するという方法もアリかもしれない。
大儲けをしてそれまでの借金を返済し、たいした資産が残っていない場合は資産税を課税しない。
法人と個人を上手く調整して、いずれの名義でも多額の金融資産や固定資産を保有すれば、資産税で課税する。

このように、所得税と資産税を相互に調整することができれば、暦年単位による課税でもある程度公平感が生まれるだろう。

資産で残さず消費に回ってしまえば…最低限、景気刺激効果が期待できる。

現実に行うとなると細かな点で多くの問題点が浮かび上がってくるが、個人による水平分業システムでの「働き方」への備えとしての税制改革は避けて通ることはできない。

肝心なことは、大企業サラリーマンや公務員であることが最も有利で居心地のいい現在の税制を、少しずつでも個人単位に変えていく必要があるということだ。

敢えてリスクをとっても、税制まで敵に回ったのでは、到底起業する気にはなれない。
時代に即した制度改革を進めていくことが必須だろう。

受験手帳[改訂版]
荘司 雅彦
PHP研究所
2013-01-23

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年5月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。