単なる先送りか、進展か?豊洲市場の千客万来施設、五輪後の整備で決着方向へ

音喜多 駿

こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。

昨日、小池知事より豊洲市場の千客万来施設について、五輪後に着工することで事業者との交渉がおおむね合意した旨の発表がありました。

豊洲市場の観光施設整備 都が運営会社と交渉継続へ(NHK)

万葉倶楽部側もプレスリリースを発表し、

・東京五輪までは予定地を、東京都がにぎわい創出のために暫定運用する
・五輪終了後、万葉倶楽部が基本協定に基づいて事業に着工する
・知事からは書面および対面で、会長に対して誠意ある謝罪が行われた

という旨が記載されています。

「千客万来施設」事業の継続に関する東京都への提案について(万葉倶楽部HP)

交渉決裂で再公募→撤退した事業者からは損害賠償訴訟…

という展開が東京都にとって考えうる最悪のケースだっただけに、ギリギリの土壇場とはいえ知事が非を認めて謝罪し、事業者と前向きな合意に至ったのは率直に喜ばしいことだと思います。

(万葉倶楽部HP千客万来施設完成図より)

遅きに逸した感は否めませんが、今からでも軌道修正を図る方が都民・東京都にとってプラスに働くのであれば、その政治的判断は一定の評価に値するのではないでしょうか。

またこの千客万来施設の着工により、築地再開発の方向性も自ずと絞られてくることになりますから、有識者会議を終えてもなんら具体的なプランを描けなかった知事および東京都にとって、これは大きな助け舟になるはずです。

一方で、もちろんまだ問題は山積みですし、協議がまとまりつつあるからといって看過できない点も多々残っています。

上記は江東区議のツイートです。本来は「豊洲市場の開場と同時」であった賑わい施設の開設がさらに遅れるわけですから、区長・区議会を始めとする地域住民が簡単に納得できないのは仕方のないことです。

「築地再開発も含めて、結局すべて『五輪後』に先送りしているだけではないか

との指摘もあり、これは小池知事も否定できないところでしょう。

そもそも、知事が早い段階から非を認めて事業者が着工していれば、東京五輪前に施設をオープンさせることは十分に可能でした。

ここまで政治的決断を先延ばしにしてきた知事の失政は明確であり、その失敗を都民に対しても率直に認め、この合意した計画を具体化しながら、しっかりと責任を果たしていくことが求められます。

また、「五輪まで東京都が暫定運用」という新規方針についても、また新たな都税が投入されることは確実です(しかも、土地を貸して入ってくるはずだった賃料は消滅)。

これも本来はまったく不要であった都民負担ですし、ワイズ・スペンディングの観点から批判のそしりを免れることはできないでしょう。

そして「賑わいを創出する場」として活用する方針とのことですが、単にイベントスペースと化して、一部の広告代理店にだけお金が落ちるような事態になることは厳に慎まなければなりません。

この新たな方針について、都民が納得する内容を提示・実行する極めて重い責任が小池知事には生じていると言えます。

以上のように、交渉が決裂しなかったのは喜ばしいことですし、ここまで水面下でギリギリの調整をしていた関係各所には、改めて深く感謝をしたいと思います。

一方で、小池知事の決断の遅れが新たな都民負担を招いた点や、今後の具体的な運営方針については、引き続き議会からも厳しく問いただしていく必要があります。

大きく事態が動いた豊洲市場移転問題。来月の議会で主要論点となることは間違いなく、引き続き私も注力していきたいと思います。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は東京都議会議員、音喜多駿氏(北区選出、かがやけ Tokyo)のブログ2018年5月31日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。