社説比較が示す新聞のモリカケ疲れ

2018年06月02日 06:00

検察ペースで誘導された流れ

森友学園への国有地払い下げ問題は、新聞の一面トップを何度、飾ったことでしょうか。大阪地検特捜部が財務省関係者らの不起訴処分を発表しました。検察審査会の場で取り上げられることがあっても、次第に国民の関心から遠ざかっていくのでしょう。「検察は不起訴へ」を1か月前から新聞が書き始め、検察ペースにあしらわれてきた感じです。

もともと検察は民間の事件には厳しくても、政界や官界には甘く、特に今回は安倍政権、財務省絡みであることもあり、検察は敬遠気味で、意気込みはあまり感じられませんでした。毎日新聞が「検察は不起訴の方向」という独材を掲載したのは1か月前です。朝日と並ぶ反安倍政権の毎日にとっては、歓迎できると情報ではなかったでしょう。

そのせいか本来なら一面掲載でおかしくないのに、目立たない別の面で小さな扱い(東京版)でした。後追いする新聞社が増え、結局、その通りになりました。検察は過大な期待感を抱かれることを警戒し、メディアを誘導してきた、と思います。検察による意図的なリークでしょう。

各社とも不起訴に疑問

新聞各紙の社説を読むと、「これで決着とはならぬ。罪なしとする検察の判断に、納得がいかない人はおおいのではないか」(朝日)など、不起訴処分に不満を示しています。読売も「不起訴の結論に異を唱える国民は多いだろう」、毎日は「結論は国民の感覚とずれている」と、同様の主張です。

そう怒ってみても、今後、新事実が発掘されたとしても、政権、政府は「そんな事実はない。伝聞の伝聞だ」で逃げ切ろとするでしょう。国会で取り上げられても、水掛け論に終始し、真相はいつまでたっても分からず、追及する側に疲ればかりがたまる。検察にはもう頼れません。

新聞のモリカケ疲れは、社説が従来からの主張を繰り返しているところにも表れています。毎日は「国民を欺いた罪は消えぬ」と、強い調子の見出しです。では具体的にどうするのかというと、「徹底的な内部調査や改ざんを防ぐための法的措置の検討など、引き続き問題に向き合っていく必要がある」というのです。検察が断念したことを、どこが徹底的な調査に取り組むのでしょうか。

支持率の推移次第

産経の主張も意味がよく分かりません。「行政の長として責任を痛感し、国民に深くお詫びする」との安倍首相の発言を取り上げ、「それには真相の解明と開示が必要である」というのです。真相を解明しようとして、今回の「不起訴処分」にたどりついたのですから、どうしたらいいのでしょうか。

その一方で、産経は「外交の重要問題が山積している。いつまでもこの問題に関わってはいられない」と。主旨が一貫していません。執筆者もどう書いたら説得力を持たせることができるのか、迷っている違いありません。

森友問題の焦点は、政治と学園経営者の接点を浮き彫りにすることだったはずです。それ対し、読売の社説の見出しは「財務省は国民の信頼を損ねた」です。「学園側はどう喝まがいの交渉を繰り返した」、「財務省による改ざんは、公文書に対する信頼失を失墜させる許し難い行為」などなど。学園や財務省そうさせたのは、政治の側にも責任があったかなかったか、という視点が抜け落ちています。

今後、世論調査による首相支持率がどう推移するかですね。「不起訴処分」が有権者の不満を誘い、支持率の低迷が続くのか。首相が総裁3選を目指し、有権者が「首相は反省をしていない」と判断するのか。米朝首脳会談で北朝鮮の核ミサイル問題が好転した場合、安倍政権のプラスなるのかならないのか。米朝会談が不調だった場合はどうか。そういう意味では、モリカケ問題は幕切れはまだ先なのでしょう。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2018年6月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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