日銀が国債買入を減額したにも関わらず、円安が進行した理由

5月31日の夕方に日銀が発表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」によると6月の日銀による国債買入のスケジュールは1回当たりのオファー金額のレンジ、そして回数ともに5月とまったく同じとなっていた。

ところが、6月1日の10時10分の日銀による国債買入のオファーにおいて、残存期間5年超10年以下のいわゆる長期ゾーンの国債買入を前回の4500億円から今回のオファーは4300億円と200億円減額したのである。

6月の買入スケジュールが5月のものとまったく同じだったことで、当面、日銀は買入額を修正に動くことはないだろうと大方の市場参加者は見ていたと思う。そんなところに、日銀はオファー額を減額した。

「当面の長期国債等の買入れの運営について」での買入額は、4500億円といった絶対額ではなく、3000億円から5000億円程度というレンジが設けられていることもあり、数字が前月と変わらなかったからといって、減額はありえないということではない。ただし、タイミングからはややサプライズとも言えた。

これを受けて債券先物は151円近くから150円80銭近くまで下落した。前日の31日に先物は日中4銭しか動いていなかったことを考えれば、大きく下落したことになるかもしれないが、この程度の下落は急落とは言わない。債券市場参加者がそれほど動揺したわけではない。特にこの長期ゾーンは今年2月に4500億円に増額してから手をつけていなかったゾーンであり、今年度は国債発行額が減少していたこともあり、いずれ減額はありうると見ていた参加者も多いと思われる。

今回の動きとして興味深かったのが、債券市場そのものの反応よりも、外為市場での反応であった。これまでも日銀のこのような減額に対して債券先物などよりドル円の方が敏感に反応していた。その動きとしては当然ながら、日銀の国債買入縮小なので、緩和策の修正かとの連想により円高(ドル円の下落)であった。

今回も日銀の国債買入のオファー額を確認して、109円近くにあったドル円は一時108円70銭近くまで下げていた、ところが、今回はすぐに切り返して109円20銭まで戻していた。一見すると日銀の国債買入減額に対し、円安で反応したかにもみえる動きとなっていた。

今回のドル円の動きの背景としては、日銀の国債買入減額に対する反応よりも、日経平均が戻ってきており、イタリアの政局リスクの後退なども意識されて、こちらに反応していた可能性がある。というよりも日銀の国債買入の微調整に対して緩和策の修正という認識が変化していた可能性がある。

相場の方程式に絶対はなく、その場その場で、どの材料に反応しやすく、どのようにポジションが傾いていたのかなどが影響する。このため今回のような動きも起こりうる。これによって日銀による国債買入減額は必ずしも円高要因とはなりえないといった見方が外為市場で強まれば、日銀としても買入修正をしやすくなる。これまでも円債がそれほど反応していないのに、ドル円が過剰に反応するのはどうかと個人的にも見ていたのだが。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年6月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。