ストーリーテリングの破壊的効果②

2018年06月03日 06:00

条件反射的に聞き手の反論を起こさせないという点で、ストーリーの方が論理的な説明より相手の頭に入り込みやすいという点を前回は説明した。

ストーリーのもう1つの効果は、聞き手の感情を揺さぶることができるという点だ。
数字やグラフを用いた論理的な説明の場合、相手が感情を揺さぶられることはない。
それに対して、ストーリーは聞き手の感情を揺さぶり、語り手に「感情移入」してしまうという絶大な効果が期待できる。

「感情移入」させるには、次の2つの要素をストーリーに組み込むのが効果的だ。
第1の要素は、「ハラハラドキドキ絶体絶命」的なものだ。

映画やドラマを観ている聴衆が、思わず主人公に「頑張れ!負けるな」と感情移入してしまうのは、主人公等が絶体絶命の状態に置かれた時だ。
断崖絶壁、片方の手で岩に捕まって谷底に落ちそうになっている主人公。
握力が弱ってきて腕がブルブル震えている。
捕まっている岩まで崩れそうになっている。
このような場面では、ほとんどの聴衆が感情移入してしまう。

第2の要素は、「聞き手に解決能力がある」という点だ。

それまで、あの手この手を使っても全く関心を示してくれなかった世界銀行の行員の姿勢を、一気に変えてしまったデニングの語った物語は以下のようなものだ(デニング「ストーリーの力」から)。

95年6月、ザンビアの小さな町で活動する医療関係者が、アメリカ国立疾病予防センター(CDC)のホームページにアクセスし、マラリアの治療に必要な情報を入手しました。
これは、世界最貧国の一つであるザンビアの、首都から600キロメートルも離れた小さな町で起こった出来事です。
その点について思いをめぐらせてみて下さい。
ここで我々が最も注目すべきは、世界銀行がこの件にまったく関与していないということです。
貧困対策に関するさまざまなノウハウを持っているはずの我々が、何百万に及ぶ人々にその知識を提供する機会すらないのです。

今後我々は、どのような組織になるべきなのでしょうか。

このストーリーは、拙著「人を動かす交渉術」でも引用して解説した。

世界最貧国、さらには首都から離れている小さな町で(小さな子供たちを含む)人々がマラリアで命を落としつつあるという「絶体絶命」の要素と、自分たち世界銀行が手を差し伸べることができるという「聞き手に解決能力がある」という要素が見事に組み込まれている。

これを聞いた世界銀行の全行員の姿勢が一変したのは言うまでもない。


編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年6月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。

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