バロンズ:良好な米5月雇用統計は、米株にバッドニュース?

2018年06月04日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは引退後の資産を考える。引退後の資産運用・引き出しには過去のリターンを当てはめることが多く、かつては株式であれば12%、債券なら6%を元に計算されてきた。しかし、今では株式のリターンは4%、債券では2%程度のリターンしか望めない。引退後の最初の年に引き出す割合については4%ルール(株式、債券からそれぞれ半分ずつ引き出す場合)という言葉が存在したが、今後はどうなるのか。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は米5月雇用統計に焦点を当てます。抄訳は、以下の通り。

雇用統計を取り上げ、ツイートせよーTake This Jobs Report and Tweet It.

米5月雇用統計が発表される1日の朝、トランプ大統領は「午前8時30分の数字が楽しみだ」とツイートした。実際のところホワイトハウスは発表前夜に雇用統計の数字を入手済みとされ「楽しみ」と言う必要はなく、米債相場はツイートを受け即座に売りで反応、米5月雇用統計が好結果だったことは言うまでもない。

トランプ大統領、問題のツイート。
twitter
(出所;Twitter

このトランプ大統領のツイートは、1985年に制定された規則に違反している可能性があり、クドロー国家経済会議(NEC)委員長は火消しに回らざるを得なかった。なおトランプ政権の前報道官だったショーン・スパイサー氏も、2017年の米2月雇用統計に公表11分前にして結果を称賛していた。いずれにしても、今後トレーダー達は米雇用統計前にトランプ大統領のツイートを血眼になって掘り起こすに違いない。

米労働省によれば、雇用統計・非農業部門就労者数の修正余地は90%の割合で11.5万人内に収まるという。従って5月の結果が下方修正された場合の最低ラインは10.8万人増、上方修正された場合の最高ラインは33.8万人増となる。

米5月雇用統計は文句なしの好結果だったが、一つ問題があるとすれば労働参加率が挙げられ、5月は62.7%と前月の62.8%から低下、非労働人口は9,590万人と前月の9,470万人から増加していた。その流れを受け、不完全失業率(経済的にパートタイムを余儀なくされている人々など縁辺労働者を含む)は7.6%へ低下した。

その一方で、平均時給は前月から改善した。モルガン・スタンレーのエコノミスト・チームによれば、今回の上昇率の牽引役は高賃金職で、実に45%を金融セクターが占めたという。金融セクターが全体の賃金に占める割合は10%にも関わらず、いかに現状の財政政策と金融政策が同セクターに恩恵を与えているかが分かるというものだ。

米5月雇用統計は米株相場を押し上げたが、前週に起こったイタリア政局の混乱により一部の投資家は打撃を受け、例えばジャナス・キャピタルのビル・グロス氏が運用する Janus Henderson Global Unconstrained Bond fund (JUCAX)は5月29日に3%も急落した。独債のショート・ポジションが敗因だ。

トランプ政権が5月31日、欧州連合(EU)・カナダ・メキシコに対し鉄鋼・アルミ関税を発動すると発表したが、米5月雇用統計はこのバッドニュースを相殺したかのようだ。また、一時は中止が取り沙汰された米朝首脳会談も、6月12日開催に向け再び動き出した。チャーチル元英首相がかつて述べたように、「長話は常に戦争より良いことだ」。

しかし米5月雇用統計で示された数字は、米株相場に強気とは言い難い。ケスラー・インベストメント・アドバイザーズのロバート・ケスラー代表は、失業率が3.8%をつけた2000年を振り返り、米10年債利回りが6.5%とFF金利が6%から6.5%へ上昇する局面だったと振り返る。S&P500は2000年3月にピークアウトし、ITバブル崩壊後はS&P500構成銘柄におけるIT企業の割合が78%から49%へ低下した。

ルーソールド・グループのジム・ポールセン最高投資責任者(CIO)は、雇用統計がウォールストリートよりメインストリートに恩恵があるという。なぜなら失業率が3.9%以下の場合、S&P500のリターンは1950年以降で平均5.65%高と、3.9%以上だった時の年間平均13.21%高を下回るためだ。また失業率が3.9%以下だった場合、月間のリターンは44%がマイナスへ沈んでいた。逆の場合は、35%に過ぎない。

力強い労働市場は、FOMCに利上げ余地を与えうる。一方で、保護主義的な通商政策がサプライサイドの抑制しかねない。後者が現実となれば、Fedはインフレ上昇と成長鈍化とい強気派が恐れるシナリオに直面しそうだ。

——米5月雇用統計では、平均時給も改善していましたよね。ベビーブーマー世代の引退が労働参加率を押し下げていると共に、高賃金である同世代が低賃金の若手に取って代わりつつあり、平均時給が押し下げられているという説があります。では、今回はどうだったのでしょうか?

労働参加率、年齢別は以下の通り。

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労働参加率、全米と65歳以上は以下の通り。
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(作成:My Big Apple NY)

ご覧の通り労働参加率は全米で62.7%と4ヵ月ぶりの低水準でしたが、65歳以上は19.8%と前月から0.2%ポイント上昇し、過去最高を更新していました。55歳以上も40.1%と、2012年10月~2013年1月につけた過去最高の40.7%を視野に入れています。翻って、35~34歳は82.3%と前月から0.2%ポイント低下35~44歳に至っては前月から0.5%ポイントも低下し82.6%と、7ヵ月ぶりの低水準だったのです。つまり、今回の賃金上昇は高賃金の高齢層が支えた可能性を残します。しかし、こちらで指摘させて頂いたように、年齢別での最大の人口はミレニアル世代で約4分の1を占めます。労働市場は逼迫し失業率は2000年4月以来の最低を更新したとはいえ、労働参加率がベビーブーマー世代の引退で片付けられない事情もあり、数字だけをみて喜んでいられません。

(カバー写真:David Shankbone/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年6月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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