小泉総理だから出来た司法改革:あすの会が変えた被害者権利の常識

2018年06月04日 06:00

司法制度改革審議会の意見書を受け取る小泉首相(当時)=2001年6月首相官邸サイトより:編集部

先入見に捉われている人たちの意識を改革出来るか、出来ないか。
出来る人は、やはり特別な能力を持った人で、まさにリーダーと呼ぶに相応しい人だろう。

小泉純一郎元総理は、既得権や既成概念に縛られて、誰も絶対に手を付けられなかったはずの郵政3事業の民営化を実現し、それまで公務員の身分を有していた郵政職員を一気に非公務員に変えてしまった。

そんな恐ろしいことを、と思うが、小泉総理は一切ぶれないで、一人ですべてをやり遂げてしまった。
私は小泉チルドレンではなかったが、つくづく小泉総理の時代に自民党の衆議院議員になってよかったと思っている。

小泉総理だから出来た、と思っている大事業がもう一つある。

司法改革である。

司法改革の目玉として、裁判員制度の導入や法曹養成制度の改革、検察審査会制度の改革などが挙げられるだろうが、私は、裁判員制度の導入と共に、裁判所や検察庁、弁護士会、さらには警察官等司法関係者の意識を大きく変える引き金となったのが犯罪被害者等基本法の制定だったろうと思っている。

その犯罪被害者等基本法の制定や犯罪被害者施策の推進に多大な貢献をしてきた全国犯罪被害者の会(あすの会)の最終大会が、昨日市谷の私学会館で開催された。

あすの会がどんなに大きな成果を挙げてきたのか、ということについては、3日の朝日新聞に詳述されているので、是非読んでいただきたい。

司法の歴史に残るはずのあすの会の赫々たる成果は、ひとえに、あすの会の代表であった岡村勲弁護士が小泉総理に面会し、小泉総理から前向きの回答を貰った、ということによるものだろうと私は思っている。

「そうか。それは大変なことだ。何とかしなければならないな。」とまで小泉総理が言われたどうかは分からないが、小泉総理が岡本弁護士の話を身を乗り出すようにして聞いて、ゴーサインを発したことは間違いないようである。

「犯罪被害者は、刑事裁判の蚊帳の外に置かれており、いわば裁判の証拠品のような扱いを受けており、犯罪被害者の権利は憲法上も法律上も一切認められていない。」

岡村弁護士が諄々として説く訴えが、小泉総理の心に沁み透ったのだと思う。
犯罪被害者等基本法が成立したのは、岡村弁護士が小泉総理と面談してから1年半近く経過した平成16年12月である。

犯罪被害者の権利、などと言えば、何を寝呆けたことを言っているのか、とその筋の専門家たちから冷たくあしらわれかねない時代に、犯罪被害者の権利を確立すべし、と声高に主張していた人たちがいた、ということである。

あすの会の方々が、世間の常識を変えた。
小泉総理が、世間の常識を変えた。
あすの会の岡村勲弁護士も小泉純一郎元総理も、日本の傑出したリーダーであることは間違いない。

「あすの会」の活動の成果一覧

ちょっと文字が小さくて判読し難いとは思うが、市谷の私学会館で3日開催された全国犯罪被害者の会(あすの会)の最終大会で配布されたあすの会の活動の成果と題する書面の写真を参考までに掲載しておく。

あすの会が獲得した成果は、実に多岐にわたっているが、

①刑事裁判(被害者参加制度の創設+損害賠償命令制度の創設)

②経済的補償制度の拡充

③時効の廃止

④少年審判の傍聴等の創設

⑤その他

の五つに分類されており、特に刑事裁判制度への改革が大きい。

以下、参考のため、①刑事裁判(被害者参加制度の創設+損害賠償命令制度の創設)に関する事項のみ列挙しておく。

ア 記録の閲覧・謄写→裁判が始まる前から、かつ民事訴訟とは無関係に、事件の内容を知りたいという理由だけでも、閲覧謄写ができるようになった。
イ 検察官による説明・検察官への要望→事前に、丁寧に説明してくれるようになり、要望にも真摯に耳を傾けてくれるようになった。
ウ 裁判期日の通知→裁判所が、通知してくれるようになり、かつ被害者の都合にも合わせてくれるようになった。
エ 優先傍聴席→被害者や親族のために、優先的に傍聴席を確保してもらえるようになった。
オ 在廷権→バーの中に入って検察官の近くに座れるようになった(法廷の風景が一変し、緊張感が生まれるようになった)。
カ 被告人質問→直接、被告人に質問ができるようになった。
キ 情状証人への尋問→直接、情状証人に尋問ができるようになった。
ク 求刑意見など→検察官とは別に、独立して求刑意見を言えるようになった。
ケ 遮蔽処置→従来よりも広く認められるようになった。
コ 国選被害者参加弁護士→一定の資力以下の被害者には、国の費用で弁護士をつけられるようになった。
サ 旅費日当→旅費は全額支給され(海外からの渡航費用でも全額支給)、日当も1日につき数千円、支給されるようになった。
シ 損害賠償命令→民事訴訟を起こす必要がなくなり、刑事の判決終了と同時に刑事の裁判官が刑事の記録を使って原則4回以内で損害賠償命令を出してくれ、印紙代も一律2000円となり、記録をコピーする必要もなくなった。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年6月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。

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