不愉快な日大アメフト事件を今後の教訓にするために

2018年06月04日 11:30

NHKニュースより

日大アメフト部の反則タックル事件は、非常に不愉快な事件です。世論の大多数も同様に感じているのではと思います。マスメディアの報道、関係者の記者会見等でその内実は概ね明らかになり、所属団体による事実関係の調査及びその結果説明や関係者の処分も行われています。しかしながら、今一つ納得のいかない感じがします。

今回、日大のアメフト部を舞台に起きた事は、組織の課題、組織上層部と個人の係わりに関する問題であり、個人が何らかの組織に属する現代社会においては身近に起こりうる問題です。この組織と個人に焦点を当てて事件を振り返ると次のような事件の構図が現れます。

それは、まず、組織の上層部である監督及びそのまわりのコーチたちの行為が、組織内の弱者である一選手に対してルール違反、違法な行為を、命令ではないとする伝達方法で強要する。そして、事後、それが事件となると上層部は自らの責任を弱者に転嫁するというものです。このように見るなら、世論の大半が、事の大小の違いはあるにせよ、自身の組織内で同じような立場で、同じような理不尽な状況の経験者である若しくは同じような状況を見聞しているのではないでしょうか。

この問題を更に突き詰めて換言するなら、組織全体の利益や組織維持のためには、法令や倫理観、組織内の個人の権利を顧みない組織上層部の言動、物理的な課題を精神論等、非科学的な力で対応しようとする時代錯誤な上層部の認識による理不尽な指導や命令がなされていること、更には、これらによる不祥事、事件等の事後対応では、上層部自らの保身が垣間見える対応がなされていること、これらが本質的な問題であり、社会全体に納得できない事と思います。

確かに組織がもう一段上を目指す時、ハードルを乗り越えようとする時、組織を構成する個人のメンタリティを上げることは一つの方法であり、重要な要素の一つであると思います。しかしながら、精神論偏重は、何れその無理が組織の暴走となり、良い結果を生みません。今、起きている様々な社会問題の中で、組織が関わる問題は、会社組織にしろ、官僚組織にしろ、皆一様に組織の暴走が起こした事件と云えます。

このように考えるなら、今回の日大アメフト部の事件は、今後の教訓とすべく公明正大に事実関係、その要因も含めて明らかにすべきであり、また、その方法は司法の場ですべきと考えます。ある意味被害者とも云える反則をした日大の選手には辛い事になるとは思いますが、首謀者である監督、コーチを法の元で厳正に処罰することが、今後、このような事件を起こさないようにする一つの戒めになるのではないでしょうか。

日大アメフト部の監督、コーチの記者会見と選手の記者会見を見比べると、「選手のメンタルの弱さを鍛える指導であり、違法な行為をするような指導ではない」としたコーチや記者会見後に入院している監督よりも、多くの記者たちを前に、堂々と事実を語り、反省を述べた選手の方がメンタルが強いと思いますので、彼なら辛い状況も乗り越えられると思います。

さて、今後の対処の参考となるような話になりますが、少し前にアフガニスタンかイランかどこかでの平和維持軍のことを取り上げていたNHKドキュメンタリーの中で、ドイツ軍の将校へのブリーフィングの模様が取材されていました。その内容は、ドイツ軍では、第2次大戦時のユダヤ人等への違法行為の反省から、いくら命令であっても自身の判断で違法な行為、非人道的な命令には従わないようにとの指導がされているとのことでした。組織が自らの誤りと認め反省すること、そして対処することは難しいですが、それが出来ないと組織として若しくは社会全体としての成長はないと思います。今回の事件をして、ドイツに見習い今後の対処を志向すべきではないでしょうか。

もう一つ余談な話になりますが、「ア・フュー・グッドメン」というトム・クルーズ主演の映画が今回の事件と同じような問題を取り上げています。米国海兵隊のグアンタナモ基地で、落ちこぼれの兵士に対して、軍令では厳禁とされている「コードR」という「規律を乱す者への暴力的制」を課すのですが、その兵士が誤って死亡し、そのコードRが命令されたかどうかを軍事法廷の中で明らかにするという映画です。コードRを実行した兵士2人の弁護をするトム・クルーズ演じる法務将校が、コードRを直接命じた将校とその将校に命令した部隊長の嘘を暴こうとします。

コードRを兵士に命じる将校がコーチ、部隊長が監督に置き換わると正に映画の内容そのものです。更にジャック・ニコルソンが演じる部隊長の「コードRも時には必要」とする誤った認識も、日大監督の言い訳にダブって見えます。最後は正義が下されるのですが、あまり、内容を話すと面白くないのでこのぐらいにします。今回の事件で不快感を感じている方には、この映画でその不快感が一掃できるのではと思います。

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