「気にしすぎる」と途端に上手くいかなくなるのはなぜか!

写真は書籍画像(筆者撮影)

「それって気にしすぎだよ!」。周りの人から、そんなことを言われたことはないか。「周りの目を気にしてしまう」「先のことばかりが気になって前に進めない」「自分に自信が持てない」など。これらはすべて「気にしすぎ」からくるものである。

今回は、『「気にしすぎてうまくいかない」がなくなる本』(あさ出版)を紹介したい。著者は、心理カウンセラーの大嶋信頼さん。主な著書に、シリーズ20万部突破の『「いつも誰かに振り回される」が一瞬で変わる方法』(すばる舎)がある。

意識した途端にうまくいかなくなる

気にしすぎるというのは意識がすごく働いている状態。意識すればするほど、いろんなことに不安になるもの。すると、脳の緊張が意識が暴走しはじめてしまう。

「何にも考えずに人と喋っている時は、スムーズに会話が進んでいて楽しいと思えるのですが、ふと『もし、会話が続かなくなったらどうしよう』と意識した途端に、会話が止まってしまいます。『会話を続けなきゃ』と焦れば焦るほど、言葉がうまく出てこなくなり、『何でだ!』となってしまう。」(大嶋さん)

「お皿洗いのお手伝いで、『おしゃれなお皿だな』と楽しい気分で洗っている時に、『コレを割ってしまったらどうしよう』と意識をした瞬間に手が滑って割れてしまう。あんなに調子よく洗っていたのに急に『なぜ?』と。」(同)

大嶋さんは子供の頃、「人はどうやって呼吸をするんだろう?」と意識をしたことがあるそうだ。意識したとたんに、うまく息ができなくなり大変な思いをした。

「「息が苦しい!」と両親に訴えても、『そんなの気にするからでしょ』と言われます。『意識しちゃったから苦しくなったのに、その苦しさを気にしないなんてどうやったらいいんだ!』と思いながらも、一生懸命に自分で呼吸をしようとするのですが、なかなか苦しさが解消されず、私はいつの間にか気を失ってしまいました。」(大嶋さん)

無意識は自信を生み出す源泉

「以前の私は、『こうしたい!』と思っても、それができず、『自分ってダメだな』と自信が持てずにいました。『勉強しよう』と思って意識してもいつも三日坊主で勉強に集中できたことがないし、運動だって『うまくなりたい』と意識しても、すべてが中途半端で、何に対しても自信なんて持てたことなんかなかったのです。」(大島さん)

「催眠のお師匠さんにこのことを話した時に、『意識では、自信がないと感じているのですね。でも、私はあなたからゆるぎない自信を感じるんですけど』と言われ考えました。自分自身のイメージとしては、惨めな気分でいっぱい。学校に行けばいじめられ、勉強でいじめつ子を見返そうと思っても勉強がちっともできません。」(同)

そして、次のことに気がつく。「意識で自分はダメだと思えば思うほど、無意識はいつの間にか自信に満ち溢れていて、意識的な自分が不可能と思えることに挑戦している。

「ある日、カウンセリングで『うまく喋れる自信がない』と悩んでいらっしゃる方のお話を聞いていました。その方は『これまで人前でうまく喋れたことがなく、職場でもそれで損をしてきた』と話します。『もっと自信を持って喋ることができたら自分の人生はどんなに変わっていたのだろう。そう考えると悔しくなるんです』と。私は『自信がない』と言っているその方の無意識に注目してみることにしました。」(大島さん)

「すると、その方が『周りの人たちが話していることには内容がなくて、意味がない』と思っている、ということが話の中から見えてきました。その方は相手に理解されないから『うまく喋れない』とおっしゃっていたのですが、無意識的には『自分の話していることが高尚すぎるから理解されないだけ』という自信があったのです。」(同)

人材業界ではポピュラーな手法

大島さんの理論は、心理カウンセリングに基づいていると思われるが、人材アセスメントの分野では同じような手法はかなり前から存在する。最初に、「無意識的無能」「意識的無能」「意識的有能」「無意識的有能」の4形態のなかから、いまの自分の状況を理解させる。最終的には、「無意識的な有能」に対して意識的に行動することを学ばせるというもの。意識しなくても、自然に出来てしまう行動を理解し、行動変容を促すのである。

このプログラムは大手アセスメント会社など数社が提供している。価格は1人あたり数十万円はかかる。これに近い理論が、1冊で理解することができるのだから時代は変わったと思う。本書では、意識と無意識を楽しく紹介しながら、対人関係や仕事、そして日常などのあらゆるシーンで、無意識が使えるようになる方法が紹介されている。

尾藤克之
コラムニスト