北が米中間で二股外交へ

ポンペオ国務長官と会談した際の金正恩氏(朝鮮中央通信より引用:編集部)

北朝鮮外務省の崔善姫副相は5月24日、核問題のリビア方式の処理を主張したペンス米副大統領を「間抜け」と非難し「米朝首脳会談を物乞いしない」と発言した。この発言が引き金となり、トランプ米大統領は5月25日、米朝首脳会談を取り消したが、6月1日、北朝鮮の金英哲労働党副委員長がトランプ大統領を礼訪して金正恩労働党委員長の親書を手渡すと、自ら米朝首脳会談の開催を発表した。

北朝鮮は元より中国とロシア(旧ソ連)との間で「二股外交路線」を維持して来たが、今度は中国と米国の間で二股外交路線を取るだろう。

トランプ大統領が金正恩委員長の親書をもらい、喜んで米朝首脳会談を発表した背景には「米国の中国封じ込め外交路線に北朝鮮が前向きに協力する」と表明した可能性が高い。そして、米国の戦略的な外交政策である「中国封じ込め」に協力するのだから、「CVID(完全かつ検証可能、不可逆的な核廃棄)より、段階的な核廃棄の方に配慮して頂きたい」と親書で求めたと推定される。

「われわれには永遠の同盟国も、永遠の敵もいない。自国の利益だけが永遠だ」と語った19世紀の英国宰相、パーマストン卿の名言を再認識する。

ちなみに、北朝鮮は米側に金正恩委員長一行のシンガポール滞在費用を払ってほしいと言った。それは、国内向けであり「将軍様がトランプ大統領と核保有国同士の朝米首脳会談に招待された」と宣伝するのが狙いだろう。北朝鮮の完全な核廃棄(CVID)が疑われる一例である。

一方、北朝鮮は5月17日、軍部の序列1位、総政治局長に金秀吉・平壌市党委員長、人民武力相に努光鉄第1次官、総参謀長に李永吉第1副総参謀長を新しく任命した。さらに、9個軍団のうち6個軍団の長を更迭した。従来の「核・経済並進路線」から「経済中心路線」推進の人事に変わったわけだ。

今回の人事異動は「軍部弱体化人事」の延長線上にあり、世代交代の人事であるが、本当の狙いは指導者が不在中に発生し得る軍部クーデターの事前遮断である。北朝鮮軍部で非核化に対する反対論が根強いことの証しでもある。

(拓殖大学主任研究員・韓国統一振興院専任教授・韓国国防省専門委員・北朝鮮分析官歴任)

※本稿は6月9日、『世界日報』に掲載したコラムを筆者が加筆したものです。

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高 永喆
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2017-03-25