チャットボットは税務相談を解決してくれるか? --- 山本 ひろこ

2018年06月14日 06:00

東京都サイトより:編集部

東京都の主税局が下記のスケジュールで、チャットボットの実証実験を行っています。

1 自動車税に関する問い合わせ 5月1日から6月15日

2 納税や納税証明に関する問い合わせ 6月1日から6月30日

3 主税局ホームページのコンシェルジュ     7月1日から7月31日

試しに問い合わせてみたところ、5回質問しても1つも正しい解答を得られませんでした。実験中ゆえに対応範囲が限られているということなので、そのせいかもしれませんが、それでは実験の効果測定が正しくできないのではないか?という疑問が残ります。

ちなみに、今回の質問は、こんなやりとりでした。

違うところから納税通知書が届いた

→ごめんなさい、質問がわかりませんでした。表現を変えていただけますか?

納税通知はどこから届くの?

→ごめんなさい、質問がわかりませんでした。表現を変えていただけますか?

どこに問い合わせれば良いの?

→次の方法で納付することが出来ます。(納付方法について案内された)

問い合わせ先がわからない

→ご利用いただきありがとうございました。またのご利用をお待ちしています。

問い合わせ先がわからない

→大変申し訳ありません。今回は実証実験のため、回答の範囲が限られております。本実施に向け、いただいたご意見ご要望をしっかりと反映させてまいります。

これは昔住んでいた自治体から納税通知が届いたことに対する質問で、電話で問い合わせて解決しました。しかし、正直なところ、大量の問い合わせ先の一覧から、一体今回の質問はどこに電話すればよいのか?ということで問い合わせ先を見つけるだけでも面倒。窓口一本化できないものでしょうか。

今回の都の実証実験は、横浜市のゴミ分別案内にチャットボットが活用されていることを参考にしたようですが、ゴミ分別であれば、捨てたいものをキーワードとして入力すれば良いと誰でもわかるため、チャットボットを使いやすい。一方で、税務相談のような複雑な制度に対する質問の場合、チャットボットが答えられるような定型的な質問をすること自体が難しい。チャットボットが正確に答えられるような質問を作りやすいかどうか、そこに採用メリットの有無がかかっているでしょう。

複雑な制度に対する問い合わせ対応は、インターネット上での自己解決は難しいため、コールセンターを通じた対話的解決が適しています。ゆえに、税務相談に対するAIの活用であれば、チャットボットではなく、オペレータ支援の方が有力と考えます。情報の受け手の理解度が低いと、どこがどうわからないかを言葉にすることが難しく、適切な質問することができません。

不十分な質問に対して、本質を得るための再問いかけをし、適切な解答へと導く必要があるわけですが、こういったところこそ、人のコミュニケーション能力が活かされる場面。オペレータが極力多くのケース分析と質問対応できるよう、オペレータに対するAIでの情報提供が瞬時に行われた方が、ずっと早く求めていた答えに到達できます。

実際、「オペレータ支援」分野でのAIの活用も研究されており、IBMのWatsonなど、実務化もされています。しかもコールセンターを民間委託で外部切り出しをすれば365日対応が可能となるうえ、コストも低い。税務署別の対応でなく、単一のコールセンターで質問対応できるようになれば、都民も問い合わせ先を都度探す必要がなくわかりやすい。

行政はAI活用による自動化ばかり考えがちですが、AIは情報を自動で提供してくれる反面、情報を引き出すためのキーワードがある程度はマッチしなければ、適切な情報が引き出せません。よほど高度なAI技術が実装されるまでは、人力が介する必要性がある。そもそも、いきなり自動化についていけない人たちのサポートのためにも人力が介する必要性がある。いきなり自動化やオンライン手続きを目指す前に、過渡期の今は、人力とデジタルの融合的な手法を検討すべきではないでしょうか

山本ひろこ 目黒区議会議員(日本維新の会)
1976年生まれ、広島出身、埼玉大学卒業、東洋大学公民連携学修士、東京工業大学イノベーション科学博士課程後期。

外資金融企業でITエンジニアとして勤務しながら、3人娘のために4年連続で保活をするうちに、行政のありかたに疑問を抱く。その後の勉強会で小さな政府理論に目覚め、政治の世界へ。2015年、目黒区議選に初当選。PPP(公民連携)研究所、情報通信学会所属、テレワーク学会所属。

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