米国の物価動向とFRBの利上げペース

米労働省が12日に発表した5月の米消費者物価指数は前月比0.2%上昇した。前年同月比では2.8%の上昇となりガソリンなどエネルギー価格の上昇が全体を押し上げた。また、全体から食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比で0.2%、前年同月比で2.2%の上昇となった(日経新聞電子版の記事より)。

米消費者物価指数は総合では、2012年2月に前年比プラス2.9%となって以来の大きな上昇となった。今年に入ってからは1月が前年比プラス2.1%、2月が同2.2%、3月が同2.4%、4月が同2.5%、5月が同2.8%となっていた。ここにきての前年比が大きく上昇したのは、原油価格の上昇に依るところが大きいとみられる。原油価格の指標となっているWTIは昨年末の60ドル近辺から、5月には70ドル台を回復していた。

また、全体から食品とエネルギーを除いたコア指数も今年に入ってからは1月が前年比プラス1.8%、2月が同1.8%、3月が同2.1%、4月が同2.1%、5月が同2.2%となっていた。3月移行は2%台が定着している。この指数はエネルギーを除いているものの、原油を使った製品等などによって原油価格の上昇の影響も受けているとみられる。また、米国の景気そのものの拡大も寄与しているものとみられる。

FRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置いているが、それは消費者物価指数ではなくPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%としている。PCEデフレータも3月と4月は前年比2.0%となっている。PCEコアデフレータは3月が前年比1.9%、4月が同1.8%と2%には届いていないが、2%近辺にある。

これをみてもFRBとしてもほぼ物価は目標値に近い位置におり、物価が利上げペースを阻害することはないとみられ、昨日のFOMCでも政策金利を年1.50~1.75%から1.75~2.00%に引き上げた。今年はあと2回の利上げとの見通しとなった。ただし、物価の上昇は緩やかなものであり、FRBとしても物価上昇を抑制する意味での利上げではなく、正常化を進めるためのものである以上、ここからの利上げの回数にも限度はあるとみられる。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年6月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。