北朝鮮をめぐる日米朝韓の勝ち負け

2018年06月15日 13:30

各国政府公式サイトより:編集部

米朝首脳会談について、あいかわらず、日米韓それぞれの政権に近い人やメディアは成功だったといい、反対派や懐疑派は失敗だったというポジショントークを繰り広げているが、そんなものは、まじめな分析ではない。大事なことは、党派的な利害でなく国益であるが、そういう気持ちを失って外交を論じるべきでなかろう。

私は、この会談が成功だったかどうかはこれから何ヶ月かで出る結果次第だと思うが、トランプとして主観的には成功だったのだと思う。すでに書いたが、中間選挙狙いというには時間がありすぎるから、いま、見かけの勝利を演出しても仕方ないので、そんな浅はかなものでないと思う。

トランプ自身だけでなく、ポンペイオやボルトンが北朝鮮に騙されたり、糊塗策で満足するような馬鹿とは思えない。

ただ、その目算が本当にうまくいくかは、分からないが、うまくいかなかったら、北が誠実でなかったと言って最大限の圧力や部分的な武力行使に踏み切る覚悟なのだろう。

そして、日本としては、とりあえず、トランプのシナリオに乗って、果実を確保するべきだ。いまトランプのお墨付きで金正恩に合うのは、ほかのタイミングで会う、独自の交渉や中国や韓国の斡旋でとかで会うよりははるかに好都合な会い方だと思う。

トランプは、「アメリカは制裁解除まではできるが、経済再建のための金を出せるとしたら日本だから、安倍首相と話し合うべきだと」ビジネスマンらしくあからさまにいい、しかも、拉致問題について数回にわたって言及して、そこを解決しないと安倍首相は動けないと念押ししたらしいが、これ以上に良い展開はないだろう。

日本は少なくとも金正恩が拉致問題について、拉致の全容と生存者のその後について納得のいく説明をし、生存者を帰し、もし、子供などがいたら納得できる措置をとるといったことは最低条件だし、そこまでは、トランプのお墨付きが故にもっていけるだろう。

ただ、苦い真実が判明したときに、安倍首相がそれをもって経済協力に踏み切れるような環境になるかはややこしい。判明している拉致被害者が全員帰国し、さらには、その疑いが濃いと日本側がみている人たちについて全員が生きて帰国でき、北が犯行を認め、詳細な状況を説明し、関係者を処罰するのが百点満点だが、そうでなければ経済協力できないとまでいったら外交交渉にならない。

それから、安倍外交の足を引っ張ろうとする勢力は、早く平壌に行けとせっついて日本政府が足下を見られるような状況を生じさせようとしているが、これこそ売国奴的だ。自国の交渉の足を引っ張ってどうする。

日朝会談がトランプの肝いりで実現するなら、北もリーズナブルな対応をせざるを得ないだろうし、日本も合理性を越えた高いハードルでは交渉できないだろうから、日朝だけの話し合いよりはうまくいくものと期待したいがそのあたりは互いの指導者の器の問題だ。

完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)

「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」は、それをアメリカが共同宣言に書くように要求し、最終的には「完全な非核化」で妥協したのだが、ポンペイオによれば、それは、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」を意味するのだという。アメリカがそれを北朝鮮が了解したということで押していけばいいことである。そこは、クリントンやオバマと違って、北がそういうつもりでないといってもトランプ政権はゆるさないから、それでいいのである。

合同演習については、駐韓大使に任命された日系人のハリス氏が議会の公聴会で、「金正恩に完全な非核化を促すために必要だった」といっていたが、そういうことなのだろう。ビジネスマンとしてのトランプは、相手が会社に帰るときにお土産をもたせないとだめと思っているらしい。

先日、紹介したアメリカ在住の日本人女性が私のFacebookへのコメントで、

トランプの最終目的が「工事を完成させること」にあるのであれば、現段階ではプロジェクトへの参加メンバーを決定して方針について大枠での合意を交わした段階に過ぎません。いずれにせよ合意を取り付けた後は早期に着工するみたいですから今後の成り行きを見守るしかなさそうです。トランプが金正恩に融和的な態度を取っていることが気に入らない、ノーベル賞目当てだ、次期選挙目当てだ、と短絡的なことを言ってる人も依然多いようですが、「国際ビジネス」の世界では取引先のことを公の場でけなすようなバカはいないし、本心であろうがなかろうが、どんな相手に対しても最大限に尊重する態度を「見せる」のは当然の事です。

とコメントしてくれたが、そういうことだろう。

韓国与党の地方選での勝利

文在寅がシンガポールに呼ばれなかったのは、金正恩が嫌ったのだろう。全コリアンを代表してトランプと写真をとりたい金正恩にとって文在寅は邪魔でしかない。

ただ、文在寅は今回の出来事で地方選挙で大勝利を収めた。保守野党がこの打撃を克服するにはかなり時間がかかるだろう。そういう意味ではトランプも安倍首相も文在寅にずいぶん大きなプレゼントをしたものだ。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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