虐待防止のためにも、養育費支払いの義務化を

玉木 雄一郎

国民民主党の虐待防止法案、党内で了承

5歳児の結愛ちゃんの痛ましい虐待死事件を受けて、国民民主党は、再発を防止するための児童福祉法および児童虐待防止法の改正案を取りまとめ、昨日、党内手続きを完了しました。

①まず、児童相談所における児童福祉士を、人口4万人に1人から、3万人に1人へと、よりきめ細かく配置することとし、児童相談所の体制を拡充します。これで、全国で児童福祉士が約1200人増えます。

②次に、児童相談所間や、児童相談所と警察など関係機関との情報共有の一層の促進をはかるための規定を追加します。

③また、結愛ちゃんのケースのように、他の地域に引っ越した場合に、転出前の児童相談所長から、転出後の児童相談所長に、引き継ぎ事項の通知を義務付けます。

親権の制限など、まだまだ課題はありますが、今回は、速やかに取り組むべき対策を法案に盛り込みました。国会が延長されたので、与野党協力のもと、今国会での成立を図りたいと思います。

虐待防止には貧困対策が不可欠

今回の事件を受けて、児童相談所や乳児院の方に話を伺いましたが、ある方から言われた言葉が強く印象に残っています。それは、「虐待問題の多くは貧困問題。」という言葉です。例えば、再婚した夫が、前夫との間に生まれた母親の連れ子を虐待するケースがありますが、若い一人親に十分な所得がなければ、仮に虐待を行うパートナーであっても、なかなか別れられない現実があります。

離婚した配偶者に養育費支払いを義務化すべき

こうした一人親、とりわけシングルマザー世帯の貧困を防止するためには、離婚した父親に、養育費の支払いを義務化することが有効です。以前、NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんからもお話を伺いましたが、日本では、養育費の不払いが8割もあり、仮に、養育費の支払いが義務化されれば、200億円もの「逃げ得」フリーライダーを許さず、シングルマザーの貧困や、子どもの貧困を改善できます。

スウェーデンでは、国による養育費の「立て替え払い制度」があり、国が養育費を支払い、支払い義務のある父親に対して国が請求する制度です。これだと、DV(ドメスティック・バイオレンス)などで離婚した場合、避けたい相手に直接請求しなくてよくなります。日本でも導入すべきです。ちなみに、明石市の泉市長は、市による養育費の立て替え払いを検討しています。

なお、明石市では、他にも先進的な取り組みを行っており、例えば、養育費の取り決めや受け取りについて、調停の申し立てや公正証書の作成、また、給与の差し押さえなどの手続きをサポートする事業を行っています。

養育費の支払率と貧困率には負の相関

我が党の大西健介衆議院議員が、本年4月に国会質問で示したように、養育費受給率が94.8%のスウェーデンや、55.8%のフランスなど、養育費の受給率が高い国ほど、一人親世帯の貧困率が低くなる傾向がはっきりと出ています。

これに対して、日本では、離婚の際に養育費の取り決めをしたのは全体の37.7%しかなく、このうち実際に養育費を受けたのは19.7%で約2割。結果、先ほど述べたように、約8割のケースで養育費が支払われていません。

一人親世帯の貧困率が、54.6%であるということを考えれば、一人親世帯の貧困や子どもの貧困を防止するためには、そして、子どもの虐待死を防ぐためにも、養育費の支払いを義務化し、その支払いを確実にする仕組みを導入すべきです。実現に向けて取り組みます。


編集部より:この記事は、国民民主党共同代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2018年6月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。