東京都の発表した「児童虐待防止条例」に効果はあるのか

駒崎 弘樹

産経新聞電子版より

619日都議会において、小池都知事は都民ファーストの質問に対し、児童虐待防止条例を作るという答弁を行いました。

これまでの知事が看過してきた児童虐待問題に一歩大きく踏み込む、という意味では非常に評価できるのではないでしょうか。

一方、条例というのは、国で言うところの法律ですが、それを作ることが児童虐待防止に本当に繋がっていくのでしょうか? 

横浜市の児童虐待防止条例は?

先行事例としてあるのが、横浜市の児童虐待防止条例です。

2011年に自民党市議団がマニフェストとして掲げた条例ですが、これを作ったことによって、どのくらいの意味があったのでしょうか。

横浜市のある市議に聞いてみました。 

駒崎「この条例を作って、何が変わったんですか?」

市議14条に施策推進にあたり財政措置を講じるよう勤めるとあるものの、具体的に行ったのは、啓発事業で、パンフレットを作成、配布したくらいですね」

駒崎「それだけですか?」

市議「理念条例(理念が記されただけで、実効性が薄い条例)なんですよね。」 

駒崎「これ、よく読むと、第54

『保護者は、子育てに関し支援等が必要となった場合は、積極的に子育て支援事業を利用するとともに、地域活動に参加すること等により、子育てに係る生活環境が地域社会から孤立することのないよう努めなければならない』

ってあるじゃないですか。 

『保護者は孤立することのないよう努めなければならない』って、なんで保護者に義務かけてんですか!

孤立するな、って行政に言われて、孤立しないでいられるとでも思ってるんです?」

市議「そうなんです。イマイチなんです。」

と言うわけでした。

せっかくの条例なのに、なんと勿体無い、と唇を噛みました。 

条例は内容次第

横浜市の条例から分かること。それは理念条例じゃダメ、ということです。

きちんと実効性のあるルールを入れ込んでいかないと、作る意味がありません。

例えばそれは、警察との情報連携であったり、児相の機能分化であったり、国より手厚い十分な職員の配置基準であったり、児相職員が必ず子どもに面会するという義務規定であったり、常勤弁護士の配置だったり、それら全てを裏付ける財政措置だったりします。

これがなんちゃっての理念条例になるか、実効性のあるものにできるか、は都民が継続的に児童虐待問題に関心を持ち、都に声をかけ続けるかどうか、によって変わってきます。

この世論の盛り上がりを一過性のものとせず、きちんとした制度に繋げていくこと。

問われているのは小池都政であると同時に、我々都民もまた、問われているのです。

追記
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編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2018年6月20日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。