加計理事長の会見社説は新聞の負け

2018年06月22日 06:00

NHKニュースより:編集部

メディアの非力を嘆け

モリカケ問題の片方の役者である加計学園の理事長が記者会見を開き、そのしたたかな言動にメディアは、はぐらかされました。これまで姿を見せなかった人物だけに、各紙は一斉に社説で取り上げはしたものの、建前論を並べたてるばかりで、「だから読まれない」という社説ばかり、完敗です。

世論調査などをみると、モリカケ問題が十分に解明されていないとする有権者が大半で、安倍政権への支持率低下につながっています。特捜部が捜査している森友問題はともかく、加計学園問題となると、多くの有権者の心象は灰色でも、立件に至っていません。

首相が加計理事長と面会したとか、「いいね」といったとかの文書は出てきました。それを学園側に「誤った情報を県側に与えてしまった」、「首相と理事長が面会した記憶も記録もない」と否定され、尻切れトンボの状態です。記者会見や国会質疑で押し問答しても、捜査機関でない限り、「記憶にない、記録もない」を突破できないでしょう。

直前にメディアに会見の開催を通告し、しかも地元記者だけに限定しました。こんなことは普通はあり得ません。さらに大阪地震の取材で人手が足りず、しかも紙面はワールドカップの日本快勝がでかでかと扱われているタイミングを狙うなど、学園側は、メディアをはぐらかす知恵には長けているのでしょう。

愚痴ばかり書いている

このような時こそ、社説はずばっと切り込んでほしいのに、愚痴ばかり読まされている感じです。朝日は「これでは納得できない」の見出しで、「鍵を握る人物がようやく公の場に出てきたというのに、その説明は具体性も説得力も欠いていた。これでは到底、疑念を払しょくできない」といいます。

このような人物を相手にした場合、疑念を払しょくするような発言を本人に期待するのは無理です。疑念があれば、シロクロつけるのはメディア側の務めです。獣医学部創設に関して、明るみになった文書(いいねとの首相発言)について、理事長は「記録も記憶もない」と記者会見で発言しました。朝日は「そういうだけでは信用できない」と、指摘しました。

社説で「信用できない」と書くのなら、メディアが自ら信用できる証拠を発掘してこなければなりません。「信用できない」と相手に責任を押し付けたところで、問題は何も解決しません。新聞社の取材力の非力さを認めるほうが率直でいいと思います。

毎日新聞は「軽すぎる作り話の始末」という見出しです。「明確な証拠を示さず。軽い内部処分とお詫びで済ませるというのは、ことの重大さをわきまえていない」は、どうでしょうか。毎日は、「面会が虚偽であったなら、認可を得るために地元自治体をだましたことになる悪質な行為だ」、「県や市は93憶円の支出を決めている。その手続きの正当性が揺らぎかねない」と、核心には迫っています。

刑事訴追の動きなしか

それでは、県や市が加計学園を詐欺か何かで訴えるのかというと、そうではなさそうです。自治体ができなければ、県民か市民が訴えでれば、捜査機関の出番となるのに、そういう動きもなさそうです。獣医学部の誘致が地元の自治体に利益をもたらすからでしょう。

日経は「刑事訴追を受けない限り、問題ないというのは、ひとつの理屈だ」、「行政府が立法府をだましたことに、衆参議長は黙ったままでいいのか」と、主張します。建前としてはそうでも、日経の主張には、迫力はありません。安倍1強政権で両院議長は自民党ですから、黙ったままでしょう。黙ったままでいられない証拠をメディアが突きつけることなのに、それも難しようですね。

社説で加計学園の獣医学部誘致に怪しい点があるというのなら、証拠を示すことです。それができないのに、例えば東京新聞は「理事長を証人喚問して事実を解明すべきだ」、「国政調査権を発動して、国権の最高機関としての役割を果たすべきだ」と、力説します。自公政権の圧倒的多数の下では、空論に終わります。証拠を集められない自社の非力さを同時に認めるべきなのです。

読売新聞はどうかというと、延長国会を論じる社説の中で、ほんの10行ほど、「首相が学部新設に関与した事実は見つかっていないとはいえ、丁寧に説明する責任がある」と、この問題に触れています。「丁寧に説明」という文言は首相から聞き飽きるほど聞かされていますし、判断に困った時に使うメディアの常套用語です。常套用語より必要なのは証拠集めの取材でしょう。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2018年6月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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