税理士が解説!銀行の評価がすぐにわかるチェックポイント

写真は税理士の松波さん(HPより)

東京都Q区にあるホーマン設備(仮名)は、今年の売上が堅調だった。しかし、「売上が増えてもお金が残らない」と社長はぼやく。6月末、4月に仕入れた100万円の買掛金を支払わなければいけない。手元の現金が50万円しかないので支払えない。「ヤバイ、倒産の危険性がある。黒字なのになぜだ!」。急いで銀行に連絡するが対応は冷たかった。

今回、紹介するのは『その節税が会社を殺す お金に強い社長がコッソリやってる節税&資金繰りの裏』(すばる舎)。著者は税理士の、松波竜太さん。会計事務所業界のキャリアが長く、多くの資金繰りと銀行交渉についてサポートをおこなってきた実績がある。本書では、会社を強くする節税・銀行の言いなりにならない交渉術がまとめられている。

銀行は貴社をどのように見ている

中小企業にとって銀行とのつき合い方は難しい。銀行に好かれてないなら、他の銀行を当たればいいが、そもそも、好かれているのか、そうでないのかが分からない。まず最初に、松波さん作成のチェックリストを使って、チェックしてもらいたい。

<銀行の融資に後ろ向きチェックリスト10問>
□金利が2%を超えている
□担当者は呼ばなければ来てくれない
□支店長(保証協会)がOKしないと思いますと、担当者の予想ベースで断られる
□一度も上司(課長・部長・支店長)を連れてきてくれたことがない
□企業の将来像や経営者の方針に興味がない
□他行の動向を尋ねられたことがない
□午後5時を過ぎると会ってくれない、来てくれない
□担当者がドタキャンをする
□決算書のあら探しをされ、無理難題を吹っかけられる
□保証協会付の融資しか勧められたことがない

チェックの数が
0個 何も問題ありません。
1個~3個 やや貴社の融資に後ろ向きです。
4個~8個 完全に貴社に対して後ろ向きです。
9個~10個 現状の融資すら返してもらいたいと思っている可能性があります。

「いかがでしょうか?『銀行員って融資先にはこんな感じじゃないの?』と思われた方もいらっしゃるかも知れませんが、銀行員がこれの逆のような、懇切丁寧な対応をしている企業もたくさんあります。融資金額の大きな大企業でなくても、そのような高待遇の会社は、いくらでもあります。」(松波さん)

「なぜ、銀行員が貴社にはこういう態度を取るような事態に陥ってしまうのか?実はそれよりも、『なぜこういう事態に気がつかなかったのか?』の方が重要です。それはズバリ、
取引銀行が少ないからです!」(同)

貴社が置かれているリスク

あなたの会社が利益を出していているのに、このような状態にあったとすると大きなリスクを背負うことになる。たとえば、「相場より不利な条件を押し付けられても気づかない」、「融資失敗の原因が自社にあるのか、銀行にあるのか判断ができない」、「銀行にそっぽを向かれても頼る相手がいない」というリスクである。

「他の銀行を当たってみてください。複数の銀行とお付合いして、銀行とは適度な緊関係を持っている必要があるのです。『浮気をするようで後ろめたい』『他に銀行がない』という方もいるでしょう。地域によってはそういう状況も考えられます。もし、多額の資金調達が必要なら、銀行の多い場所で事業をおこなうのが理想です。」(松波さん)

「本社の移転がベストです。『銀行を選ぶ』これはそのくらい大切なことなのです。『書類上』でも構いません。良い支店の営業エリアに拠点を記するだけでも有効です。」(同)

この本は、一般の営業マンなどにもおすすめできる。会社全体のお金の流れを把握することで経営のことが理解できるようになる。会社を強くする節税・銀行の言いなりにならない交渉術は興味深い。トクする税金、借金と銀行の話には一見の価値がある。

尾藤克之
コラムニスト