事業投資のリスクと株式投資のリスク

2018年07月03日 11:30

ある企業の株式や社債に投資をすることは、株式や社債という「紙」を買うのではなくて、その企業の営む事業に投資することである。また、企業に融資することも、同じように、その企業の営む事業に投資することである。そして、事業に投資するということは、その事業が生み出すキャッシュフローに参画することにほかならない。

もっとも、厳密にいえば、キャッシュフローを生み出すためには費用もかかるので、入ってくるキャッシュのインフローと、出ていくキャッシュのアウトフローの差、即ち、ネットのキャッシュフローが投資の対象となる目的物である。

投資の本質は、一般化していえば、このネット事業キャッシュフローに投資することに帰着する。もちろん、企業経営に事業キャッシュフローの創出を委任することになるので、投資の一般的形態は、企業の発行する株式や社債への投資になり、また企業に対する融資になるのである。

さて、かくいえば、何が投資の本源的なリスクであるかは明瞭である。リスクとは、ネット事業キャッシュフローが減少する可能性であり、更には、ゼロもしくはマイナスに転じる可能性である。しかるに、企業のネットのキャッシュフローなど、かなり高い確率で、マイナスになる。事業活動は、一般に、手元に残るネットのキャッシュフローに比して、キャッシュのインフローもアウトフローも大きいのだから、それぞれにおける変動の結果として、ネットのキャッシュフローがマイナスになることは少しも珍しくないのである。

しかし、いうまでもなく、それは一時的な現象であって、企業として存続する限りは、その期間中の累積において、ネットのキャッシュフローがマイナスになることは想定されていない。逆に、将来に向かって、ネットのキャッシュフローがマイナスになることが予想された段階で、企業としての生命は終わるのであって、そこに、究極のリスクが顕在化する。

また、一時的なネットキャッシュフローのマイナスでも、そこで手元流動性が枯渇すれば、事業の継続は不可能となる。故に、ネットキャッシュフローは、究極的には全て分配されるにしても、経営の裁量において、適当な額が内部留保されて蓄積され、一時的なキャッシュフローの逆転に対する備えとして、また、成長戦略における設備投資等のために使われる。

こうした背景から、企業の営む事業に投資するには、事業が生み出すキャッシュフローの分配を受け取る権利について、優先劣後関係が作られているのである。株式、社債、融資という投資対象の名称は、その優先劣後関係を示すものにほかならない。

株式とは、最も劣後した権利として、つまり、内部留保として、上位にある融資と社債等の価値を守るべく、ネットキャッシュフローにかかわるリスクを吸収し、しかし、同時に、事業の成長を支えるものとして、上位の融資と社債等へ利息等が支払われた後の残余を独占することで、事業価値成長の恩恵を受けるものなのである。故に、株式投資の本質は、単なる事業キャッシュフローへの投資ではなくて、その成長への投資なのである。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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