炭素繊維複合材と装甲車と日本の防衛産業

2018年07月03日 06:00

炭素繊維の新技術で攻勢 | 帝人が東レ独走に“待った“(週刊東洋経済)

今週の週刊東洋経済の記事です。ネットでは全文が読めませんので、ご興味の方は紙媒体をご購入ください。

前も東洋経済で東レがテンカーテ社を買収する記事が出たときも書いたのですが、同社は複合装甲素材のトップメーカーであります。欧米、その他の装甲車メーカーにも多く供給しています。
以下はユーロサトリ2018での同社の展示です。

同社は装甲車だけではなく、ヘリや航空機などの装甲板や、難燃繊維なども製造しているテンカーテ社の一部門です。何年素材は皮肉にも帝人のトワロンブランドのアラミド繊維が使用されており、これは米軍でも使用されております。ところが、自衛隊は能力が低く、色落ちも激しいビニロン製迷彩服を未だに採用しております。

さて、本来テンカーテ社の炭素繊維コンポジット部門が東レの傘下になれば、東レとテンカーテ社との関係も深まるでしょう。であれば我が国の装甲車開発のてこ入れにもなりそうな話ですが、これは無理でしょう。いまでのしがらみがあったり、官側もメーカーも世界の先端や常識を知ろうとしない、どこにカネをかけるべきかも分かっていないので、テンカーテ社によるてこ入れがあってもそれを生かし切れないでしょう。

実は既に警察や海保の防弾ベストやらヘリの防弾などに素材を提供しています。

さて、「熱可塑性の炭素繊維複合材」ですが、普通のクルマよりも装甲車輌の方がむしろ導入が容易ではないでしょうか。一台あたりの単価も高いし、また重量が重く、軽量化によるメリットが大きいからです。無論これを装甲として使うことはできませんが、現在鉄製などのコンポーネントをこれで置き換えることが可能であり、軽量化に寄与するでしょう。

更に複合装甲の導入も更に高まるでしょう。増加装甲などでは複合装甲の使用は当たり前ですが、テンカーテ社やドイツのIBD社などではキューポラなどの複合材料化を提案しております。これらのコンポーネントの複合材に変われば。軽量化はもとより、整形が容易なので、上手くいけば製造コストや補修コストが安く上がる可能性もあります。

その他、ハッチやら後部のランプドアなども複合装甲で生産すればかなりの軽量化が実現するでしょう。既に英国のスパキャット社やアメリカのフォースプロテクション社などは軽量装甲車の車体を複合装甲で作る技術を確立しています。既にこの技術は英国防省が90年代に実証車輌を開発しています。

今すぐではないでしょうが、装甲車輌の複合装甲による製造は現実化するでしょう。装軌車輌に関して言えば現在40トンクラスまでゴム製履帯が増えています。このクラスでは鉄製に比べて約1トンに軽量化が可能です。恐らく本古50トン、60トンクラス、つまりMBTまで広がるのではないでしょうか。

さて、世の中はあれこれ進んでいるのですが、その流れから我が国の防衛省、装備庁、自衛隊は取り残されています。これをどう変えていくのか。当事者の意識改革が望まれます。

本日の市ヶ谷の噂■
海自のUH-Xで、候補にV-22オスプレイをごり押ししたいアメリカ様を忖度して、要求仕様で求めていた機体のテール部の折り畳みという仕様を無くした、との噂。

ユーロサトリ2018のレポートは東京DARで


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年7月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

※3日16時 筆者の申し出により訂正更新しました。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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