原油埋蔵量最大のベネズエラが輸入でキューバへの供給を賄う事情

2018年07月06日 06:00


原油の埋蔵量では世界最大の国、ベネズエラ。その規模は米国の原油埋蔵量の8倍である。その国が敢えて原油を輸入せねばならない事態になっている。社会主義国を目指したチャベス前大統領、そして彼の跡を継いだマドゥロ大統領が国家をそのような状態に導いてしまったのである。

ロイター通信はベネズエラ国営石油会社(PDVSA :Petróleos de Venezuela, S.A.)に関係した機密情報を入手し、その一部を公表した。それを元に、世界の経済主要紙も記事として提供した。

その情報によると、ベネズエラで国内で消費する石油も資金も不足しているというのに、キューバの為に今年も金額にしておよそ4億4000万ドル(475億円)相当の原油を1月から輸入を開始したというのである。この仕入先はロシアのウラル地方の原油で、それをキューバに直接送ったのである。キューバの精油設備は旧ソ連のものであるから精油には都合が良い。

キューバからの通貨による支払は存在しない。ウーゴ・チャベスとフィデル・カストロの間で2000年に合意して、ベネズエラが原油を提供する代わりに、キューバはサービスや資材を提供することで支払に充てることになっている。キューバから医師や看護師をベネズエラに派遣しているのもその一貫である。

ベネズエラ国内は深刻な物不足で、しかもハイパーインフレで資金難にある。その国がなぜキューバの為に敢えて原油を輸入するのか。理由は、欧米から制裁を科せられているベネズエラにとって、キューバはロシアや中国と同様に僅かに残っている同盟国だからである。因みに、マドゥロが亡命しなければならなくなれば、キューバが彼を受け入れる話になっているという噂もある。

また、チャベス政権下で2005年にペトロ・カリベという組織が創設された。17か国が加盟しており、チャベスの反米運動への支持を受けるために加盟国17か国にベネズエラから安価に原油を供給するというものである。今年5月、マドゥロが欧米の反対を押し切って大統領選挙を実施した時に、米州機構(OAS)はその投票を無効にするように働きかけたが、加盟国の3分の1はそれに同意しなかった。何れもペトロ・カリベに加盟している国であった。それはベネズエラから安価に原油を提供してもらってきた返礼であった。

石油輸出国機構(OPEC)によると、ベネズエラの5月の産油量は日量153万バレルで、他の情報によると139万バレルだという話もある。これは1950年以来最低の産油量であるという。その為、精油所も生産能力の36%しか稼働していないという。

2008年には日量320万バレルを産油していた国である。それが現在半分の産油量にまで落ちているのは経済成長の大きな後退に伴う投資の減少で生産設備にまったく改善が見られていないということや、従業員の17%が職場を離れて出国したということ。特に、職場を離れた従業員は心臓部に携わっていたエンジニアで代替え要員を見つけるのは容易ではない。

石油関係で15年の経験をもつ専門エンジニアは月給3000-15000ドル(32万4000円―162万円)を稼ぐことができるのに、PDVSAでは僅か14ドル(1500円)しか支給していないというみすぼらしい給与なのである。その上、PDVSAの最高経営者は常に軍人で企業経営に全くの素人であるということ。この慣習は現在も続いている。だからチャベスが大統領として国家の舵取りを行うようになってからPDVSAは利益を計上できる企業体制になっていないのである。

その影響で、カリブ海のボネール島とシント・ユースタティウス島にあるPDVSAの製油設備も未払いが理由で米国のコノコ・フィリップス社に法的に差し押さえられることが決まったという。

ベネズエラは現在輸入した原油を日量5万7000バレル分を精油しているという。現在40万バレルが国内消費に向けられているそうだ。輸入には自国で産油する超重質原油を燃料として使用するには薄める必要がある。その際に軽質油ナフサを使用する。その輸入が米国などから12万から20万バレル買い付けられている。

原油の輸入は中国のペトロチャイナ、ロシアのロスネフトとルクオイル、インドのリライアンス・インダストリーズなどから輸入している。ベネズエラは資金が不足している国である。支払いはあとからベネズエラより原油を提供して支払いに充てるという約束を交わして物々交換をおこなっているのである。

この様なマドゥロ政権の犠牲になっているのがベネズエラ国民である。例えば、2011年には460億ドル(4兆9700億円)相当の国内消費目的の物品の輸入が削減され、それに加えて2017年には60億ドル(6500億円)がさらに物品輸入から削減されたという。だから、国内には食料、医薬品などあらゆる物資の不足が発生しているのである。

欧米そしてラテンアメリカの大半の国がマドゥロ大統領の政権放棄を要求している。その為に制裁を科すという形で圧力をかけている。嘗てのように、米軍が軍事介入する可能性は殆どない。寧ろ、国内で軍部がクーデターを起こすことを煽っている。

この様な事態で、苦しむのはべネズエラ国民である。コロンビアではこの16カ月でベネズエラ人からの移民が100万人を越えたという。

コロンビア経由でチリ、アルゼンチンなどに移動する者もいる。スペインにもベネズエラからの移民が増加し、現在20万人のベネズエラ出身者がスペインで生活しているという。

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