「小さな政府」は日本で可能なのか

2018年07月13日 23:30

夏の合宿に出演していただく浅尾慶一郎さんは2009年にみんなの党が結成されたときの結党メンバーだが、みんなの党は日本では珍しい「小さな政府」をめざす政党だった。浅尾さんも「アメリカの共和党のような政党が日本にも必要だ」というが、最近の安倍政権は経済政策では、金融の超緩和やバラマキ財政など「大きな政府」に傾斜している。

浅尾さんが1995年に入党した新進党の党首だった小沢一郎氏は、1980年代に英米で成功した「保守革命」を日本でもやろうとした。それは保守本流の延長でもあった。岸信介は戦時国債の経験から、赤字国債を許さなかった。

その後も自民党の右派は、中曽根首相から小泉首相に至るまで均衡財政主義で、行政改革が政権のコアだった。中曽根政権の国鉄・電電民営化も、小泉政権の郵政民営化も「小さな政府」の政策だった。それは赤字国債を大量に発行すると、金利上昇とインフレで国が滅びる、という危機感があったからだ。

しかし財政状況は、2000年代から変わった。ゼロ金利が続き、日銀が量的緩和をしてもインフレにならない。金利負担(国債費)が増えないため、政府債務は1000兆円を超えたが、単年度の財政赤字は減っている。プライマリーバランスは黒字にならないが、債務残高のGDP比は2014年度をピークに下がっている。

低金利・デフレの最大の原因は、JBpressでも書いたようにグローバル化だと思われるが、それが元に戻ることはありえないので、安倍政権の「大きな政府」は、持続可能かもしれない。日銀が財政ファイナンスで、将来世代に負担を先送りすればいいからだ。

このため保守本流の課題だった「財政再建」は、それほど深刻な問題ではなくなった。財政は政治の手段なので、財政再建そのものは目的になりえない。安倍氏のライバルである石破茂氏も岸田文雄氏も財政再建を掲げているが、緊縮財政で選挙に勝つことはむずかしい。

日本は潜在的には国民負担率60%を超える大きな政府だが、国債のおかげで今だけは国民負担率40%以下の小さな政府である。ゼロ金利の時代に「小さな政府」は意味があるのか。国債で現在世代が将来世代に莫大な負担を先送りするとき、議会制民主主義はもつのか。夏の合宿で浅尾さんとともに考えたい。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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