人生の幸せは人間関係に帰結する

尾藤 克之
写真は同封されていた手紙と書籍画像

写真は著者から送られてきた手紙と書籍

先日投稿した、「日本一早いビジネス書ランキング(2018上半期)」が、編集者の間で話題になっていると聞いた。書籍の内容を知りたいという要望もいただいた。今回は本田健さんの『大富豪からの手紙』(ダイヤモンド社)を紹介したい。

本田健さんは、100万部を突破した『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房)を代表作として130冊以上の著書実績がある。累計発行部数は700万部を突破するなど、日本を代表する著者であり投資家としても知られている。

「人間関係」はすべての要である

――本書は、小説仕立ての自己啓発本である。大富豪の祖父が主人公の青年に、お金ではなく、9つの手紙を残したところから物語は始まる。メンターをテーマにすることで、読者に「人生の指針」を与えているのが特徴である。9つの手紙のなかで印象に残った『人間関係』について、一部を引用をしながらお伝えしたい。

「どんなにお金を得ようとも、どんなに権力を得ようとも、人間は幸せになれない。人間関係が良くなければ、『まったく不幸』としか言いようがないと、私は思う。仕事で成功したり、お金持ちになっただけでは、人は幸せになれない。たとえ大豪邸に住んでいても、家族や友人が誰もいなくて1人ぼっちなら、さみしいだけだ。」(本田健さん)

「お金があまりなくても、仲のいい家族と一緒に暮らしていて、たくさんの友人に囲まれている人の方が、はるかに幸せではないだろうか。心が満たされて幸せに生きるためには、『いい人間関係』が不可欠だ。『いい人間関係』からは、エネルギーをもらえるし、毎日にやりがいもでてくる。」(同)

――そして、次のように解説する。成功者は多くのお金を持っているかも知れない。しかし、人間関係がうまくいかなければ、すべてが砂を噛むようになってしまう。結局は「人は、お金や社会的地位」だけでは、幸せになれない。

「お金や仕事をうまくいかせることで得られる喜びは、『一時的な興奮』でしかないし、永続的なものではない。誰かと心からつながったと感じるときにしか、人は幸せを感じられないようになっている。人間関係が、幸せのカギだということだ。」(本田健さん)

※ハーバード大学が75年に渡って724名の人を追跡した研究『What makes a good life? Lessons from the longest study on happiness』によれば、人生を幸せにするのは「良い人間関係につきる」ことが明らかになっている。ロバート・ウォールディンガー(精神科医、ハーバード大学医学部臨床教授)の研究発表により明らかにされた。

リンカーンに学ぶいい人間関係

――第16代アメリカ合衆国のリンカーン大統領は、アメリカ国民に、もっとも愛された大統領と言われている人物である。リンカーンは「人間関係」にとても優れた人物だった。次のエピソードを紹介したい。

「リンカーンは、『こちらに五分の理しかない場合には、どんなに重大なことでも、相手にゆずるべきだ。百パーセントこちらが正しいと思われる場合でも、小さいことならゆずったほうがいい』『もし相手を自分の意見に賛成させたければ、まず諸君が彼の味方だとわがらせることだ』などの名言を残している。」(本田健さん)

「彼は『いい人間関係なしには、何事もうまくいかない』ということを知っていたのでしょう。仕事上の人間関係は、ある意味ではとても簡単だとも言える。相手が喜ぶことをやればいいだけ。相手を儲けさせてあげたり、有利な条件をあげるだけで喜ばれる。相手を喜ばせることが、人間関係のカギといえる。」(同)

――本田健さんは、ビジネス上であれば、相手が困っているときに、手をさしのべ、利益を与えることで、人間関係は上手くいくと解説する。しかし、私たちの時間は有限である。「自分には、まだまだ時間がある」と油断しているうちに、時間切れになってしまう。自分に向き合わないと「大切なもの」を逃してしまう危険性がある。

本書は、祖父の死から「偶然」がはじまり「運命」に導かれ帰結する。自己啓発ではなく、「人生訓」として読み解いていくと新たな気づきがあるように思われる。今年も、すでに半分が過ぎている。あなたの目標達成の進捗はいかがだろうか。

尾藤克之
コラムニスト

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