英国で進む電気自動車と太陽光発電の融合

2018年07月17日 11:30

太陽光発電の値段が安くなってきている。リチウムイオン電池も同様だ。だから、太陽光発電を家庭に設置して発電し、それをリチウムイオン電池に蓄えて、化石燃料中心の中央集権的な送電網に頼らないで生きていこうという動きが世界中で起きている。これをマイクログリッドという。今日は英国の状況をレポートする。

英国でも、家庭内に蓄電池を導入して儲けようと多くの企業が頭を捻って頑張ってはいるけど、まだ蓄電池がまだまだ高くて採算取れないという課題が立ちふさがっていて、そこは日本と同じだ。

ここでも、やっぱりテスラのパワーウォールの14kWh設置費込みで150万円という破格の安さが台風の目になっている。そこに果敢に挑む英国内資ベンチャーが、OVO EnergyとPowervaultとMoixa の三社であるとBBCはレポートしている。ちなみにこのうちMoixaには東京電力と伊藤忠が出資している。それぞれのベンチャー企業が家庭向け蓄電池を担いで今日も英国の家庭の訪問販売に励んでいる。しかし、売れ行きは今ひとつ。ちょっと停滞している。

そこで、OVO Energy が頭一つ抜け出してきた。「やっちゃえ日産」と組んで「電気自動車リーフのバッテリー使えばバッテリーいらないじゃないか。車のバッテリーから送電網に売っちゃえよ」というコンセプトで大々的なキャンペーンを張っている。

同社のウエブサイトでは、平日の午後4時から7時の3時間のピーク時に電気をグリッドに流して電力会社に売れば年間4万円程度儲かりますよとウエブサイトで謳っていて、英国政府の補助金と日産のテクノロジーで実証実験参加者を募っている状況だ。

If you exported energy to the grid from your vehicle every weekday between 4pm and 7pm, over a year, you could earn £274 (based on exporting power at 5.7kW, for 3 hours, at an export price of 7p per kWh).

OVO Energy 社ウエブサイトより引用

まあいろんなツッコミを入れる人がいるだろう。例えば、そもそも一般人が電気自動車買わないだろうとか、そんなの買うのは裕福な人だから、月3000円の収入で動かないだろうとか、そんなに放充電を繰り返したらバッテリーへたるだろうとか、午後7時に急に長距離ドライブが必要になった時にバッテリー残量無いとかとか。

だがしかし、批判するのは誰でも出来る。英国が日本より進んでいることは事実として深刻に受け止めなければいけない。特筆すべきは以下の三点だ。

第一に、日本では車に充電してある電気を送電網に売る(業界用語で低圧逆潮流によるV2Gという)ことは今でも禁止されている。これは大変おかしな話だ。1992年の時点で、家庭で作った太陽光発電を送電網に売るのは認められている。これは、当時電力自由化を遅らせるのと引き換えに、全国の9電力会社が集まった社長会が渋々譲歩して決められた事だ。(情報ソースは某NPOの事情通であって電力会社ではない。そのNPOがこの決定に重要な役割を果たしたのは業界では有名な話だ。)

もう26年も前に認められた、太陽光で作られた電気を送電網に流すのと、車のバッテリーから流すのと一体全体どこが違うというのだろうか。

日産自動車は電気自動車リーフを売り出した2010年当初からこのV2Gをやりたかった。この英国のベンチャーの社長が赤ん坊だった頃に、ニチコンという純日本国産のイケてる会社が作った国産システムあって、既にV2Gをやる技術があって、これをやらせてほしいと某電力会社に懇願した。

当時私はマニラのアジア開発銀行の本部で電気自動車のアジアへの展開事業を手がけていた時に、その計画を進めている日産自動車の担当の女性課長から愚痴をこぼされた。「日本の電力会社の人は電気が濁るからダメだって取り合ってくれないんです」と。「電気が濁る」って一体なんなんだろうか。私には訳がわからない。

その女性は、電力会社との長期にわたる攻防戦に疲れ果てて結局職を辞することになった。あの時、V2Gが実現していたら世界は変わっていたはずだ。テスラの出現と市場独占を阻めたかもしれない。

その直後に東日本大震災が起こり、電力セクターは自由化されイノベーションを受容する方向に大きく舵を切る事になる。しかし時すでに遅し。閉鎖的な日本の電力セクターに愛想を尽かした日産自動車が8年の試行錯誤の上に行き着いたのが英国のベンチャーだった。それも日本企業が出資した会社のライバルとは何とも皮肉な話だ。

第二に英国には、ピークとオフピーク時に電気料金を変えてくるベンチャー企業が存在することだ。ピーク時は1kWhあたり40円、夜中のオフピーク時は10円を切る。だから、安い時に充電して高い時に放電をすれば単純計算で30円儲かる。諸事情あって日本ではそのような料金メニューを提示するようなエッジの効いた企業は一社たりとも存在しない。

第三に英国では、政府がそのような実証事業をガチンコでサポートしていることだ。英国に自動車メーカーが多くいるのに日産自動車という外資と、小さなベンチャー企業と三社でタッグを組んでイノベーションの実現の旗を振るようなフットワークの軽さは日本政府にはない。

だからこれを鼻で笑う前に、まず自分のできるところから社会革新を実現するための一歩を踏み出すことが日本人全員に問われている。

一旦火がつくとやり遂げる力があると僕は信じているし、ソーラーブロックチェーンで電動モビリティをゼロエミッション化するl事業でそのイノベーションの実現に力を尽くそうと僕は努力していきたい。

メールnaoki.sakai@energysharing.jp

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酒井 直樹
株式会社電力シェアリング代表

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