観光立国型ソーシャルビジネス!何を買っても寄付に繋がるホテル

2018年07月20日 11:30

アゴラでも私や松田公太さんの記事などで何度か紹介されているが、食を通じて社会問題の解決に取り組むソーシャルビジネスとして「TABLE FOR TWO」(TFT)という認定NPO法人が活躍している。先進国の飽食メタボと、途上国の飢餓を一挙両得で解決しようと、企業の食堂にヘルシーランチを提供して集めた代金を寄付金の原資として、アフリカやアジアの飢餓国の学校給食を提供するというビジネスモデルを展開。タンザニアのある村では、給食の安定供給により就学率の劇的なアップをするなど、成果を出している。

そして創業から10年余。日本発のソーシャルビジネスとして注目されてきたTFTは、この夏から新たな企画を始める。今度は、不動産テックのイタンジ社などと提携し、宿泊、飲食、スペース利用など施設内でのすべての購買活動を、TFTへの寄付へとつながる宿泊施設「サスティナブルホステル KIKKA」を、8月1日に東神田でオープンすることを発表。おととい(7月18日)の記者会見に参加してきた。

KIKKA公式サイトより

地下のバーでの記者会見(左からイタンジの伊藤嘉盛社長、運営会社7gardenの北野賢社長、TFT大宮千絵さん、SHIORIさん)

ホテル開業の記者会見など、普段は政治記事を書くことが多い私が行くことに違和感をもつ読者も多いだろう。なので、裏話的な補足をすると、ステマなどではまったくない(苦笑)。

近年のTFTは毎年、グロービスの一室を借りて3年前に紹介したような企業とのコラボ企画の発表を続けていたが、ワンパターン化は否めなかった。それでも熱心に(しつこく?)取材誘致をしてくるものだから、日産出身の広報担当、 大宮千絵さんについ苦言したところ、彼女はそれにめげず、むしろ同僚たちと新たな企画に踏み出す契機にして「ホテル業界初」という取り組みを披露ということで、意気に感じて見学した次第だ。

本筋に話を戻す。TFTのプレスリリースによると、「寄付につながる購買」として主なものとしては、

  • 使い捨てアメニティを使用しない場合は、宿泊料金の一部が寄付
  • シーツやタオル交換を希望しない場合は、宿泊料金の一部が寄付
  • おにぎりセットの購入で料金の一部を寄付
  • ドリンク・アルコールの購入で料金の一部を寄付
  • シェアスペースのご利用で料金の一部を寄付

といったものがある。

KIKKAは、かつて企業がオフィスや倉庫に使っていた6階建ての商業ビルを全面リノベーション。2〜3階がドミトリー(相部屋)のスペースが計60、4〜6階にシングルやダブルの個室が計14室をそれぞれ配備。「食」のNPOが運営とあって飲食にも趣向を凝らしており、1階のカフェでは、料理家のSHIORIさんプロデュースのおにぎりセットや、フェアトレード輸入したコロンビア製のスペシャリティコーヒーを提供する。おにぎり、コーヒーも試してみたが、お世辞を抜きに結構なお味でございました。会見場にもなった地下1階にはバーやコワーキングスペースもあった。

訪日外国人は過去5年(2013〜17年)で、1,036万人から2,869万人に急増。東京の宿泊施設の不足が取りざたされて久しいが、2020年のオリンピック・パラリンピックをにらみ、インバウンド需要を狙う。

一方で、インバウンドの宿泊需要といえば、新法施行で話題の民泊があるが、イタンジの伊藤嘉盛代表は、自社で民泊ができるシェアハウスを手がけてきた経験から「(観光客は)現地の若い人と遊んだり、地元の店に連れていってもらうことへのニーズがある。民泊はホストがゲストをもてなす1対1のコミュニティだが、(KIKKAは)1対nのグループでの交流が生まれるところが差別化になる」と述べた。

もちろん、なによりも「寄付」モデルが奏功してこその存在意義だ。前出のTFT広報、大宮さんは「この取り組みが成功し、業界全体に広がっていけたら」と期待を寄せる。個人による寄付文化が根付かないと言われがちな日本にあって、購買行動と巧みに結びつける事例となれるのか。観光立国型ソーシャルビジネスの新しい成功例になるよう、健闘を祈りたい。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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