国民民主党は、なぜ朝日新聞にdisられるのか

2018年07月22日 06:00

玉木氏(Wikipediaより)と朝日新聞(紙面より)

アゴラ夏合宿の開催まで2週間を切った(8月4、5日)。第1部の「ポスト平成の政治報道とジャーナリズム」の企画・準備のため、最近の政治報道の振り返りや分析をしているが、通常国会の終盤で印象的だったのが、国民民主党の「責任野党」としての振る舞いと、それを全く評価しない朝日新聞の論調だ。

働き方改革法案とならんで最注目法案のIR整備法案をめぐり、野党は、大阪へのIR誘致を目指す維新をのぞいてすべてが反対し、完全対決するかと当初思われた。しかし、国民民主党だけは法案には反対だったものの、与党側が条件付きの付帯決議をつけで採決には応じた。

その顛末は、ギャンブル依存症問題を考える会の田中紀子さんのブログで詳しく紹介されているが、国民民主党が採決には同意した大きな理由の一つとしては、仮に当初の法案のままであれば依存症対策費の捻出が曖昧だったりするなど「ずさん」な中身だったからだ。

涙ながらに付帯決議案を読み上げる矢田議員(参議院インターネット中継より)

しかし、父親がギャンブル依存症だったという同党の矢田わか子参議院議員らの尽力もあって、法的拘束力のない付帯決議とはいえ、将来の財政的措置の検討に可能性を残すことになった。田中さんも指摘するように、維新以外のすべての野党が徹底抗戦して法案が通過していれば、当然、この話は全くなかったことになる。

ところが、朝日新聞がこの採決の経緯を報じた記事では、「野党分断」という論調だった。

分断された国民民主、野党内ブーイングに涙 カジノ法案:朝日新聞デジタル 

もちろん、朝日が指摘するように、自民党が法案を通すために、巧みに野党分断をはかった側面があるのは間違いない。しかし朝日のこの記事では、付帯決議の内容について「慎重な運用などを求める」という随分と曖昧な表現だけで中身がさっぱりわからない。本記のあとの解説記事(大久保貴裕記者)でも付帯決議については、

参院内閣委では「国会と国民に十分な説明を尽くすこと」という付帯決議が採択されたが、政令や省令などは国会に諮る必要がない。

というかたちで、「依存症」の3文字はなく、付帯決議のポイントがこの記事だけではわからないまま、政局でなんだかゴタゴタして終わりましたという印象しか残らない書き方だ。そもそも記事では矢田議員が泣いた場面は触れているが、なんで涙を流したのか触れてないので唐突な感じで、奇異な印象をもたせかねない。

その意味では、田中さんの発信がなければ国民民主党が苦渋の末に採決に応じた経緯や矢田議員の涙の理由など、世間の人にはほとんど知ることはなかったのではないか。これは私だけでなく、元フジテレビキャスターで、Japan In-depth”編集長の安倍宏行さんも同様に指摘していた。


おそらく矢田議員の身内に依存症患者がいたことなど全く知らなかったのだろう。朝日の記者が単に取材が浅かっただけともいえるが、しかし、なぜ国民民主党が付帯決議をしたのかの根本的な理由が示されていない。結局は、政局のことしか政治部の記者は興味がないのだ。あるいは、立憲民主党や共産党のほうに「正義」があるかのように伝えているようにも見える。

野党が「0対10」で負けることを望む朝日新聞

同じことは2015年秋の安保法案成立のときにも見られた。

当時のNHKニュースより

あのときも国論真っ二つという状況だったが、日本を元気にする会、次世代の党、新党改革のミニ野党3党が与党側との折衝の末に、機雷掃海などで日本への武力攻撃がなくても自衛隊派遣の際には国会の「例外なき事前承認」を求めるといった歯止め策を付帯決議に盛り込んだ。

そして自公プラス3党の賛成で法案を通したのだが、当時の民進党や共産党など「左派野党共闘」勢力からボロクソに言われただけではない。朝日新聞は当時も「野党3党に採決で賛成してもらうことで与党による『採決強行』色を薄める狙いがある」「3党が求めていた法案修正に比べれば、拘束力が弱い」などとこき下ろした(2015年9月16日朝刊)。

当時元気会の代表だった松田公太さんは法案成立時のブログで「10対0で負けるより、1でも2でも取りに行くという道を選んだ」と苦渋の選択だったことを明かしている。だが、こうした当事者たちの声を、朝日新聞が積極的に取り上げることはない。なぜなら、安保法制全面反対という自社の論調に都合が悪く、「報道しない自由」を行使するしかないのだ。

安保法案の付帯決議後、元気会、次世代、新党改革のいずれも政界から姿を消した。国民民主党も各種世論調査で支持率が0%に低迷している。もちろん、同党そのものに問題はある。憲法改正などで考え方が異なるはずの立憲民主党に政権奪還時の連立政権構想を持ちかけるなど、立ち位置が曖昧だからだ。

しかし一方で、野党の対決路線、日程闘争など政局ばかりを好む朝日新聞をはじめ、多くの報道機関の「親安倍か反安倍か」という両極化した政治報道の病理が、是々非々路線を許さず、結果として中道路線や、現実的政策で政権交代を狙う野党が育つ余地がないのかもしれない。当然、そうした「責任野党」を待望する人たちの受け皿となるマスコミがほとんどないので、なかなか潜在ニーズが可視化されない。

(訂正とおわび:7:00)当初、「国民民主党が賛成に回った」と書きましたが、「反対だったものの付帯決議をつけることで採決には応じた」の誤りでしたので訂正します。ご指摘くださった玉木代表にお詫びと御礼を申し上げます。

以上は私の仮説だが、アゴラ夏合宿では、政治ジャーナリストの安積明子さん、JX通信社社長の米重克洋さん、アゴラ研究所フェローの宇佐美典也さんとともに、こうしたいつまでも昭和型の政局報道の問題点を議論し、ポスト平成のあるべき政治報道やジャーナリズムについて考えたい。(ちなみに夏祭りシーズンとあって例年より政治関係者らの出足が鈍く、ビジネスパーソンも含めてご参加を歓迎いたします)

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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