付帯決議は無駄ではない!

田中 紀子

国民民主党公式サイトより:編集部

国民民主党のHPに、IR法案で付帯決議をつけてくださった、矢田わか子先生のインタビューが載っていますから、是非ご一読下さい。

「付帯決議を付けた責任をこれからも果していく」野党筆頭理事としてIR整備法案と対決した矢田わか子議員に聞く(国民民主HP)

私は、矢田先生のお陰で心の底から国民民主党を見直しているのですが……って不遜な言い方ですみませんが、でも多くの国民はこの党の存在を感じていなかったのではないでしょうか?

だけど最近は、すごく政策で勝負しているんですよね。
そしてそれに気が付いてきた人達も実は多かったんですね~。知らなかった。

自民党の議員さんもこう言っていて、分かる気がするなぁ~と思いました。
政治の「風」なんてあっという間に変わりますからね。

「怖いのは国民民主」=自民幹部(時事ドットコムニュース)

そう!必要なのは、日程闘争ではなく政策闘争なんですよね。
国民はそれが見たい。野党が鋭い質問を投げかけて、与党がどう答えるか?
答えずに逃げたり、答えが甘かったりしたら、それは国民と共に追及する。

マスコミもパフォーマンスだけでなく、そういうことをきっちり報じて欲しいです。
そして政策通を育てて欲しいなと願います。

さて、この矢田議員のインタビューをみてまた驚いたのは、

その一例ですが、付帯決議第5項では、区域整備計画を申請する都道府県等に対して、計画の作成段階で公聴会を開いたり、情報開示を通じて、住民の合意を得ることを求めました。
また第6項では、この都道府県等が実施方針の策定・変更、事業者選定などを行う協議会には、カジノ事業者以外の意見を適切に反映することを求めました。

さらに第29項では、政府や関係地方公共団体が治安対策やギャンブル依存症対策について、立地自治体だけでなく、周辺自治体でも万全の対策を講じることを求め、そのために納付金や入場料による財源の活用などを求めました。

これは、ギャンブル依存症はギャンブル施設に近い住民の罹患率が高いという調査結果があるからです。

とありますが、この「ギャンブル施設に近い住民の罹患率が高い」なんて最近出た慶應大学の研究ですが、
良くご存じだなぁと思いました。勉強してくださっていて嬉しくなりました。

ギャンブル依存症3キロ以内のパチンコ店に注意(毎日新聞)

これから、特にカジノ誘致の地域住民の仲間と、地元議員と連携して、この付帯決議を守らせるように頑張っていきます。

特に「付帯決議第5項では、区域整備計画を申請する都道府県等に対して、計画の作成段階で公聴会を開いたり、情報開示を通じて、住民の合意を得ること」
ここなんか使えそうですよね。
合意も得てないのに計画だけ進められちゃった!なんてことのないようにしていきたいと思います。

今回の件で「国民民主党さん付帯をつけてくれてありがとう!」とお礼を言ったら、「付帯なんかなんの役にも立たない!」と何故か散々私がDisられる羽目になりましたが、「そんなことはない、付帯の意義は地方議員は分かっている」とか、「付帯が役に立った経験あり」という市民活動やロビー活動をしたことのある経済界からの発信も見受けられました。そして、付帯の使い方を様々な方がレクチャーして下さったんです。

なかでも「そうだったのか!」と意味がよく分かったのは、内閣は行政権の行使について国会に連帯して責任を負っていることから、可決された決議は、内閣に対して政治的・道義的拘束力があると言われていて、

だから内閣委員会でも、決議の可決後に、所管の石井国務大臣が、
「ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重して参りたいと思います。」
と発言したんだそうです。

だけど政治的・道義的拘束力ってのは法的拘束力ではないから、実現させるためには、熱心な議員と今後も連携して国会質疑や質問主意書などで追及していただくことが重要になるんだよ!ってことでした。

で、私自身、「付帯は無駄じゃない!」って経験をしていたのに、途中経過をすっかり忘れていたんですが、
そもそも「ギャンブル等依存症対策基本法」自体が、IR推進法の付帯決議から生まれた法案だったんでした!

IR推進法の時こそ、本当にものすごい攻防戦だったんですよ。
だけど例によって、反対派の野党の先生方が委員会に出席すらしないってことで、日程を1日無駄にされてしまい、ヒマな時間変な自民党の議員が般若心経を読みあげるという、めっちゃくちゃな事態になったんです。

最近はボイコットはさすがに批判の集中砲火を浴びるようになったので、やめるようにしたみたいですけど、もうあれでこっちも焦ってしまってですね、「いやもうこのままじゃ、全部通ってしまう!」と思い、野党の先生方に「審議に参加し、こんな質問をして欲しいんです!」なんてお願いして歩いたりして、疲れ果てていました。

で、もうこれは困った!ってなった時に、参議院議員の薬師寺みちよ先生に泣きついたら、
薬師寺先生が敢然と「りこさん、最後までできることをやるのよ!」と、即動いて下さり、
参議院の当時の内閣委員だった、与党の上月先生や江島先生とお引き合わせ下さり、
「先生、IR法案の付帯決議に、既存ギャンブルを含めた依存症対策を盛り込んで下さい!お願いします!」
と、薬師寺先生も一緒に必死に頼み込んで下さり、付帯がついたんです。

それがこちらですね!
特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案に対する附帯決議(参議院HP)

この国でずっと無視され続け、ないもののように蓋をされ続けたギャンブル依存症。
ところがカジノでにわかに注目され、政府も無視できなくなったんですが、危うく、カジノに限定した依存症対策を「しっかりやる!」程度で終わってしまいそうだったものが、この附帯で、

十 ギャンブル等依存症患者への対策を抜本的に強化すること。我が国におけるギャンブル等依存症の実態把握のための体制を整備し、その原因を把握・分析するとともに、ギャンブル等依存症患者の相談体制や臨床医療体制を強化すること。加えて、ギャンブル等依存症に関する教育上の取組を整備すること。また、カジノにとどまらず、他のギャンブル・遊技等に起因する依存症を含め、ギャンブル等依存症対策に関する国の取組を抜本的に強化するため、ギャンブル等依存症に総合的に対処するための仕組・体制を設けるとともに、関係省庁が十分連携して包括的な取組を構築し、強化すること。また、このために十分な予算を確保すること。

となり、ここからですねギャンブル依存症対策の論点整理が閣僚の間で始まり、その後、年をまたいで、山梨県は甲府市議会が全国に先駆けていち早く意見書を提出して下さると、各地方自治体で相次いで「付帯に書いてあったんだから、ギャンブル依存症対策しっかり推進しろ!」ってな具合に、ガンガン意見書を議会で出してくれたんですよね。

ほら、例えば京都府議会の意見書がネットで拾えたので見てみるときっちりと、
付帯決議という言葉が入っています。

ギャンブル等依存症対策の抜本的強化を求める意見書

やっぱり付帯決議は無駄じゃなかったです。
この付帯決議を最大限利用して、各自治体で運用していきましょう!


編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2018年7月23日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。