何のための導入か意味不明、納税者不在のグローバルホーク

2018年08月01日 11:30

グローバルホーク(防衛省サイトより:編集部)

無人偵察機運用へ新部隊創設…陸海空自共同で(読売新聞)

政府は、2021年度から導入する無人偵察機「グローバルホーク」について、陸海空の3自衛隊で共同運用する方針を固めた。150人規模の共同部隊を創設し、中国や北朝鮮の軍事動向の監視などに活用する。今年末に策定する次期中期防衛力整備計画(19~23年度)に明記する方針だ。

納税者を馬鹿にした話です。
既に何年も前に調達を決定し予算化しているのに、今になっての運用部隊決定です。
ぼくは中谷大臣の時代だったと思いますが、予算要求時にどこの部隊でグローバルホークを運用するか、何機導入するか、大臣や予算担当者に何度か質問しましたが、答えは「導入してから考えます」でした。

つまり、何のために、どこの部隊が、どの程度の規模の部隊を運用するか決めずに予算を取ったわけです。
これは導入自体=アメリカ様に貢ぐことが目的だったと言われても仕方がないでしょう。
違うというのであれば防衛省、自衛隊は部隊の運用構想も軍事常識もないシロウトの集団だったということになります。

そういう連中が百億、千億円単位の税金を浪費しています。

そもそも何のための導入かも防衛省は説明していません北朝鮮の監視なのか、南西諸島海域の監視なのもわからない。仮に南西諸島であれば、三沢での運用であれば3機では週に数回、該当空域滞空は数時間程度です。

であれば最終的に何機必要か。例えば南西諸島海域の監視では12機が必要で、当面三機で運用を開始し、最終的には202X年に全機を揃えて運用するというプランを立てて、納税者と国会に提示し、その上で初年度の予算が認めあれるべきです。

またなんで三沢なのか。南西諸島がターゲットであればせめて九州に配備すれば、随分該当空域での滞空時間が延びたはずです。

またなんでグローバルホークなのか、プレデターと比較をしたとは言うが、グローバルホークの海洋型であるトライトンとの比較は言及されていません。また調査費用は殆ど無く、形だけの調査でお茶を濁しています。

ところがそのような説明は無く、なし崩し的に導入決定されて、多額の税金が既に投入されました。

要は「首相官邸の最高レベル」思いつきを防衛省に押しつけただけでしょう。かつてドイツ第三帝国で自称天才のちょび髭の総統閣下が、国防軍にあれこれ思いつきを押しつけたのと同じです。違うのはその目的が宗主国のご機嫌伺いのためであり、尚更問題です。

対してオーストリアはMQ-4Cトライトンを導入します。

豪州がトライトン高高度無人機を採用(航空新聞)

オーストラリア国防省は6月26日、ノースロップ・グラマン製「トライトン」高高度滞空無人機システムの調達計画を公式に発表した。トライトンは海洋情報収集・探査・偵察(ISR)のための自動化された無人航空機システムである。オーストラリアは世界でも有数のEEZ(経済専管水域)を保有する。ノースロップ・グラマンでは、トライトンを導入することで同国は未曾有の海洋状況認識(Maritime Domain Awarness)能力を持つことになるとしている。

なお、トライトンの運用はオーストラリア空軍が担当する。

外国の記事では金額やさらなる詳細が紹介されています。

Australia to buy 6 US-made Triton drones for $5.1 billion(The Seattle Times)

ustralia has bought the first of six U.S.-manufactured long-range drones that will cost 6.9 billion Australian dollars ($5.1 billion) and significantly increase the nation’s military surveillance and reconnaissance capabilities, a government minister said Tuesday.

The first MQ-4C Triton was purchased from Northrop Grumman for AU$1.4 billion ($1 billion), Defense Industry Minister Christopher Pyne told Parliament.

Australia’s most important contributions to “Five Eyes” — an intelligence gathering network that includes the United States, Britain, Canada and New Zealand — were reconnaissance and surveillance over Southeast Asia and Antarctica, as well as the Indian and Pacific oceans.

The Tritons will operate with 12 manned P-8 Poseidon surveillance planes that are replacing the aging P-3 Orion aircraft, he said.

JDW(ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー)の7月4日号のAustralia to acquire six MQ-4C Traiton UAVs
という記事もあります。

ニュージーランドは哨戒機、ポセイドンを補完するために、6機のトライトンを約5600億円で導入、戦力化します。これは同国のエアー7000というプログラム一つで、オーストリアは19機のAP-3Cオライオンを12機のP-8Aポセインドンで更新します。オライオン2023年に全機リタイア予定です。ポセイドンは2,016年から調達が開始され、既に7機が調達されています。12機のポセインドンは2022年には完全戦力化される予定です。

最初の機体と運用施設の建設には約1200億円が見込まれています。

JDWに掲載された豪国防相のコメントによれば、トライトンはポセイドンを補完し、長距離のISRを担当し、また対潜、水上攻撃能力を強化する、とあります。

運用は空軍が担当し、エジンバラ基地で運用されます。

我が国と比べてどうでしょうか。
オーストリアは包括的なビジョンと調達計画のもと、広域海洋監視、哨戒機の補完という目的を明確にしております。このためオライオンから大幅にポセイドンの機数も減らしています。

またトライトンの調達機数、戦力化完了の次期も発表になっています。

対して我が国では現用のP-3Cを何機のP-1で更新するのか、政府も国会も知らずにP-1の調達が開始され、調達がいつ終わるか分からずに、遅れが生じて本来不要だったP-3C延命で余計な費用をかけています。

そしてご案内のようにグローバルホークを何のために、どのような目的で、何機調達して、総予算もわからず、しかも調達が始まってからかなりたった今になって、運用部隊をきめるといいます。

まったく自衛隊の全体戦力整備も考えず、導入ありきです。
果たしてこれがプロの仕事でしょうか。

これまたご案内の通りですが、グローバルホーク導入はまともな調査もされずに、官邸の思いつきで行われました。

恐らくは壮大な無駄使いとなるでしょう。当時防衛省では南西諸島用であればヘロンやプレデタークラスの機体に自国製のセンサーを搭載してより安価に、海上監視を行うという考え型もありました。

ところがそんな物をすっ飛ばして、まるでナチス第三帝国のような「偉大な主導者」の思いつきで、必要とされる手続きを端折ってグローバルホークを導入しました。

果たしてこれが民主国家のあるべき姿でしょうか。ぼくは大変疑問に思います。

Japan in Depth. に以下の記事を寄稿しました。

コマツの新型“8輪装甲車”差戻し

■本日の市ヶ谷の噂■
空自は救難ヘリ、UH-60Jの空中給油のため既存のC-130Hに給油機能を付加したが、給油装置の故障ばかりで殆ど使いものにならず、遠距離の海上で遭難事故が起きてもUH-60Jは救助に使えないという間抜けな状態になっているとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年7月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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