バロンズ誌:アップルの時価総額1兆ドルより、注目すべき数字とは

2018年08月07日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは今そこにある投資への3つのリスクである。バロンズ誌は3つのリスクとして、1)ポピュリズム、2)貿易摩擦、3)金融政策のダイバージェンス――を挙げた。特に3)をめぐっては引き続きFedの利上げによりリスク資産の下落、米国債やドルなど米国資産への資金流入が意識されると共に、エマージング市場の売り圧力が意識されよう。その半面、現状はMSCIエマージング市場指数など株価収益率(PER)が11倍と過去中央値を15%下回る水準をつけ、押し目買いの機会と捉える市場関係者も。いずれにしても、3つのリスクが横たわるなか、どのような投資戦略が奏功するのか。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが注目する名物コラムのアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は8月6日週に発表された、アップルの時価総額1兆ドル以外に注目の数字を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

アップルの1兆ドル超えだけが、前週の注目テーマにあらず―Apple’s $1 Trillion Wasn’t the Week’s Only Telling Number

アップルの時価総額が2日、米企業で初めて1兆ドルを突破した。翌日は米国が検討中の対中追加関税2,000億ドル相当への報復措置として、中国政府が対米輸入品に600億ドル相当に最大25%の追加関税を課す方針を発表。また米7月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が前月比15.7万増、失業率が3.9%へ低下したことも判明した。徐々に貿易戦争突入のリスクが高まるなか、雇用統計こそ好調だったが、7月はISM製造業景況指数・非製造業景況指数ともに低下。発表元のISMは「回答した企業はあらためて、追加関税措置並びに報復措置への懸念を強めている」と振り返る。

米株相場は一連のニュースを受けても、堅調地合いを維持。S&P500は5週続伸し、8月6日週は0.76%高で取引を終え、1月26日につけた過去最高値まであと1.13%に迫る。ダウも5週続伸し、ナスダックは8月6日週に0.96%高を遂げ3週ぶりに反発した。しかし、モルガン・スタンレーのエコノミスト・チームは、リスク市場が混乱に陥れば、貿易問題などが「サーキット・ブレーカーの発動を引き起こしかねない」と慎重だ。

雇用統計に視点を戻してみれば、貿易問題は影響を与えているように見えない。足元、労働市場には若い世代を含め参入者、再参入者が増加しており、こうした高卒者を含めた参入者を市場が吸収するなかで、失業率が低下している。実際に、高卒者の失業率はエコノミストが「完全雇用」とみなす水準である5.1%を大きく下回る状況だ。

(筆者より)高卒の失業率(25歳以上)は7月に4.0%と2001年以来の低水準近くで推移する一方で、労働参加率は57.6%と1992年の統計開始以来で最低近くを保つ(過去最低は2016年9月の56.9%)。

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(作成:My Big Apple NY)

経験不足の若い世代が労働市場に参入し職を得ているならば、経済拡大期でも賃金が上昇しないのも頷ける。特に高賃金職での失業率は頭打ちに近い状況ならば、尚更だろう。経済循環調査機関のラクシュマン・アクサン代表は「労働市場が逼迫し失業率が3.9%でも賃金が上昇しないのは、労働市場の改善が低賃金職に集中しているため」と説明する。

米連邦公開市場委員会(FOMC)が8月FOMCで経済を「強い」と表現するなか、9月25~26日開催のFOMCでの利上げ確率は90%に達している。12月18~19日開催のFOMCでは、60%という状況だ。短期金利が上昇方向にあるなか、米株市場のバリュエーションも上昇しITバブル時のピーク付近、あるいは指標次第では同時期のピークを上回る。ルーソールド・グループのダグ・ラムジー最高投資責任者は、株価売上高倍率(PSR)に注目、2倍を超えていると指摘した。時価総額1兆ドルと同じく、割高感強まりを連想させる数字と言えよう。


平均時給の伸び悩みの定説は、ベビーブーマー世代の高賃金者の引退と、それに伴う経験不足で低賃金者とされる若い世代の入れ替わりです。ただ、若い世代の労働参加率もそれほど改善していない。労働不足とされながら、非労働力にまだまだ潜在的な労働者が存在することが分かります。米7月雇用統計の25~34歳の労働参加率や失業率でみても、同様の状況。また、平均時給が全米業種別平均を下回り、単純作業が多く自動化やグローバル化の波にさらされやすく、且つ高卒者の比率が高いと想定される製造業の就労者数は、2007年12月の景気後退入り前の1,375万人のところ、2018年7月は1,275万人に減少していました。統計上の数字で労働市場がひっ迫していることは疑いようもありませんが、賃金の伸び抑制は質的な要因が加わっているとも考えられます。

(カバー写真:Kārlis Dambrāns/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年8月6日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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