米国心臓外科医のお財布事情(前編)アメリカンドリーム的年収への憧れ

前回の投稿でプロキュアメント(移植用心臓の摘出)に行くことで、1回約30万円稼ぐことができることを話しましたが、今回は米国心臓外科医(主に僕)のお金にまつわる話です。

日本の医師の給料は人によってさまざまだと思いますが(特に開業している人の場合)、僕は研修医時代、年収300万円くらいの給料からスタートしました。もちろん時間外手当やボーナスはなしです。2年の研修期間を終えると外科医としての修練が始まるのですが、その時に大学の関連病院に出張し、そこで年収1000万円くらいもらっていました。医師3年目が人生で最も給料を稼いでいた時かもしれません。

その後、心臓血管外科の修練へと移行し、基本の給料と週1回のバイトを合わせて年収700万円くらいとなり、その状態で米国への留学が決まりました。内科系の同期などから話を聞くと、外科系はやや給料が高いみたいですが、基本的にはどの科に属していても特に大きく給料が変わるという印象はなく、大学病院で働くか一般病院で働くか、というのが一番大きい要素であったような気がします。

それでは米国心臓外科はどうでしょうか。現在僕はフェロー、いわゆるトレイニーの立場で雇われており、給料は年間6万ドル(日本円で約600万円)もらっています。日本の一般病院で心臓外科として働いている僕の同期はおそらく年収1000万~1500万円くらい、月100万円以上はもらっていると思うので、10年目の心臓外科医としてはやや低めな給料です。米国に来てむしろ給料は減っているのが現状です。

ところが、このトレイニーの期間を抜けると、日本とは大きく異なる給与体系が待っています。アメリカンドリームの入り口です。日本とアメリカの大きな違いは、診療科によって平均の給料が違うところではないかと思います。中でも心臓外科医の給料は高く、平均年収が5000万円と言われています。出ました、アメリカンドリームです。有名な心臓外科医などは年収3億円とかもらっているみたいです。野球選手並みですね。

ちなみに1億円はミリオンドラーと言うので、1億円以上稼いでいる人はいわゆるミリオネアなのです。日本にいた時、医者として1億円以上稼ぐというのは不可能であると思っていましたが、米国においてはミリオネアになれる可能性がまだわずかに残っているかなと思います。いや、なれると強く信じたいです。というか願いです。

給料が大学病院よりもプライベートプラクティス、いわゆる一般病院の方が良いのは日本と一緒で、年収約7000万円から1億円くらい平均でもらっているみたいです。また、仕事の量に関しても基本は、「手術、帰る、手術、帰る」の繰り返しとなるため、研究などを行う大学に比べると少なくなるようです。

毎日「9時5時」の週5日勤務とすると、40時間×4週間×12カ月=1920時間で7000万円稼いでいることになるので、時給3〜4万円の仕事、ということになります。なんでも時給換算してしまうのは根底にある貧乏根性が抜けていない証拠ですが、時給4万円ってすごくいいですね。

大学時代にしていた寿司の宅配バイトの基本時給は1000円だったのですが、休日勤務は1.5倍、夜間は22時過ぎるとさらに1.5倍にされるため「土曜の夜は2250円も稼げる!」と浮かれていたあの頃が懐かしいです。


編集部より:この記事は、シカゴ大学心臓胸部外科医・北原大翔氏の医療情報サイト『m3.com』での連載コラム 2018年7月8日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた北原氏、m3.com編集部に感謝いたします。