今年もあの日がやってきた

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)
村上 春樹
講談社
2004-09-15

 

ふと思い出したフレーズがある。「○○だけは永遠に○歳だ」というフレーズ。村上春樹の『ノルウェイの森』かなと思い、本棚にある文庫版を取り出してみたが、老眼がひどく疲れたのでやめた。ただ、冒頭の友人が自動車で自ら命を断つシーンが出てきたのは偶然のような、必然のような。

大事な友人が亡くなってから11年が経った。今年の8月12日は、あの日と同じように日曜日だった。何度も書いていることだけど、大事なことなので、今年も書くが。あの日、私はSUMMER SONICに行っていて。真夏の昼間なのに、レミオロメンが「粉雪」を歌っていて。「夏なのに粉雪なんておかしいね。またいつかライブとか行けるといいね」という携帯メールを書きかけ。

でも、病気で療養中の友人には悪いなと思って、そのメールを消した。彼女が旅だったのはその夜だった。あのメールを送っていたらと今でも考えることがあり。その日、夏フェスを満喫した私は、翌日から自宅で処女作の執筆に集中し。1日目、2日目と今では信じられないくらいに原稿がはかどり。しかし、8月15日(水)の昼前に、悲しい知らせがあり。すべての仕事をストップして駆けつけた。

あれから11年経ち。未だに何者でもないかのように自分では思うのだけど。お陰様で、11年間、著者として残ることはなんとかできている。そう、友人が亡くなってからなのだよな、本を出すようになったのは。

今年もあのときのように、本を書いている。あの頃よりもずっと原稿が遅くなってしまったことは反省しているけど、少しくらいはきっとうまくなっているような、深くなっているような。

44歳なみから言うと、若い頃に家族の半分が亡くなり、別れは経験している方なのだけど。まだ友人が亡くなるという経験をあまりしておらず。悲しいことにこれからそういうことは増えるのだろうけど。生かされているような、生きているような。いや、そんな無責任なことは言わず、生きるのだけど。生きている者として、徹底的に生きようと思ったよ。

2018-08-13 12.50.09-1

髪をきって、カラーもして、少年のような雰囲気になった。いや、決して少年ではないことは本人がいちばんよくわかっているのだけど。あの頃より、笑顔が深くなっているかな。今日も一生懸命生きるよ。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2018年8月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。