バロンズ:テスラのLBOは、金融市場の嵐の前触れか

2018年08月14日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーはツイッターのジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)を取り上げる。同社は、サンフランシスコ内に本社があり、決済サービスのスクエアと2分も掛からない距離に建つ。それもそのはず、スクエアのCEOも、ドーシー氏であるためだ。41歳のドーシーCEOが率いる両社の株価は、ツイッターこそ決算発表後に急落したとはいえ、過去12ヵ月間で類いまれなパフォーマンスを遂げており、ツイッターは99%高、スクエアは176%高となる。両社の株価が好調な理由は何か、展望と共に詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測する名物コラムは、テスラを取り上げる。抄訳は、以下の通り。

マスクのLBO計画、将来的な米株安のシグナルか — Musk’s Buyout Plan May Signal Market Woes Ahead.

https://www.flickr.com/photos/tedconference/8514592946/in/photolist-dYpvQE-7B5259-haETfc-afSPEY-21hWNiu-21hWNMq-T258A3-T258wL-5ubGnz-25k4nNA-aB2bvJ-9BSeXs-cex63W-z4XLj7-qfd5G2-uC8AkW-rRMLTf-Phopoy-QGERKU-Xtwa8F-oNtTSq-x2dKn7-MF8FRS-BcRSGv-21Vbdrq-24RWSVE-817uJv-5yRnYp-HBPkcX-F5TJHW-cec78Y-feq9zL-52281c-V1qa6p-vWRj6g-AWqF3z-uMdB5p-bNmF56-sAgpsJ-92iXxj-FZM1Ch-gTjNEz-gTjgP8-dYLXoz-xvkQQi-bWQos2-hK3mPS-24JtQEn-mjbdZy-7PYNBG

テスラのMBOの発信が注目されたイーロン・マスク氏(TED Conference/flickr:アゴラ編集部)

イーロン・マスク氏と言えば、紹介の必要もないほど有名なテスラのCEOであり、前週に「テスラ株420ドルで非公開化を検討しており、資金は調達済みだ」とのツイートで大きな話題を振り撒いた。420ドルの株価は、マリファナ使用者の間で知られる4月20日の記念日をもじったわけでもないだろうが、ツイート前に取引された株価は340ドル付近で遠く及ばない。

しかし、株価は「資金は調達済みだ」という言葉に反応、11%も急伸した。ツイートに先立ちサウジアラビアの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンドが20億ドル相当の株式を取得したとの報道も重なったためだ。テスラの株価420ドルを基に試算すると、同社の評価額は820億ドルで、スリランカの国内総生産(GPO)に匹敵する。仮にとマスク氏が株式非公開化を実現するなら、史上空前のレバレッジド・バイアウト(LBO)なるだろう。

とはいえ、実際の規模は820億ドルを大きく下回る見通しだ。従業員と株主に提示されている枠組みでは、既存の株主は420ドルで売却することも可能だが、非公開化後も株主であり続けるという選択肢も有する。マスク氏が約20%のテスラ株を保有するなか、残り5人の大株主を合わせれば34%だ。モルガン・スタンレーのアナリスト、アダム・ジョナス氏によれば、大株主がマスク氏に株式保有で同意し、そこにサウジアラビアの政府系ファンドやその他のIT関連企業が加われば、資金調達に必要な規模は抑えられる公算だ。

そうだとしても、過去のLBOの規模を超えて来るのだろう。これまでの最高は2007年のテキサス・ユーティリティー(TXU)で440億ドル、現在のドル換算では535億ドルに及ぶ。2007年10月10日、ダウが当時の過去最高値を更新する1日前に買収を完了させ、その名をエナジー・フューチャー・ホールディグスに変更した。しかし、2014年4月には1億ドルもの債務返済に間に合わず、破産法申請を行うことになる。

ハイマン・ミンスキー氏と言えば、金融危機後に見直された米国人エコノミストだが、同氏の考えの一つは安定が金融の不安定性を生み出すというものだった。ザ・レヴィ・エコノミクス・インスティチュートが説明するに「長きにわたる成功により、投資家はリスクをより多く取るようになり、借り手が能力以上の融資を受けることを、ミンスキー氏は指摘していた」という。いわゆる、ミンスキー・モーメントだ。

金融危機から10年を経て、米当局者などはVIX指数やクレジット・デフォルト・(CDS)に調査のメスを入れてきた。しかし、Fedが明らかにしたところ、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのジョン・ダニエルソン氏、チリ大学のマルセラ・バレンズエラ氏、Fedのシニアエコノミスト、イクナー・ズラ氏は、VIX指数やCDSは危機の予兆を正確に示すものではないとの見解を寄せる。

マスミューチュアルによれば、投資適格級の社債のスプレッドは米国債に対し108bpと、1998年8月以降の平均値157bpを下回り高利回り債のスプレッドも333bpと過去20年間の平均値551bpを大幅に下回る(2008年の金融危機時を除く)。こうしてみうれば、金融市場は安定しているように見え、2007年にシティグループのチャック・プリンスCEOが述べたように、貸手は「踊り続ける」状況と言えよう。しかも、当時まさにTXUが過去最高のLBOを実施していた。

ムーディーズで投資適格の最低ライン、Baaでの米国債とのスプレッドも低水準をキープ。

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(作成:セントルイス連銀よりMy Big Apple NY)

翻って現状、金融危機らしき予兆はない。しかし、Fedは利上げサイクルにある。マスク氏によるテスラ株の非公開化は、新たな金融市場の混乱を招くシグナルなのだろうか。まるで、TXUのように

エマージング通貨は、夏場に危機を迎える場合が多い。1997年7月は、タイが通貨切り下げを行いアジア通貨危機の引き金を引いた。1998年8月には、ロシア財政危機に直面しデフォルトとルーブルの切り下げを経験する。2015年には、チャイナ・ショックが市場を直撃したものだ。そして2018年、8月にトルコ・リラは6日週の1週間で23%も急落、トルコで軟禁されている米国人牧師の釈放をめぐりトランプ政権が圧力を掛け、鉄鋼・アルミ追加関税の発動を許可するとまで警告した結果だ。

エルドアン大統領下ので経済成長が財政刺激だったこともあり、GDP比での経常赤字が6.5%煮膨らみ、2012年のギリシャ債務危機レベルにあることも、問題視されている。ストラテガス・リサーチ・パートナーズによれば、非金融企業のドル建て債務の1,980億ドル相当が期日延長されるが、リラ安の影響でさらなる債務負担を強いられるという。

欧州中央銀行(ECB)は事態に合わせ、欧州内の銀行によるトルコのエクスポージャーを調査しており、英フィナンシャル・タイムズ紙によればエクスポージャーの高い欧州系銀行はスペインのBBVA、イタリアのウニクレディット、フランスのBNPパリバだという。今のところ、トルコ・リラ急落の余波は限定的だが、ダウやS&P500など3指数の利益確定売りを促した。一方で米10年債利回りは2.87%まで低下し、7月半ば以来の低水準を回復。ドル指数も、上昇で反応した。ドルと共に、米国債が引き続き安全資産である証左と考えられる。

(カバー写真:Nicola Romagna/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年8月13日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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