ベネズエラのハイパーインフレによる影響

久保田 博幸

南米ベネズエラは20日、通貨の単位を5桁切り下げるデノミネーション(デノミ)を実施した。

ベネズエラの原油埋蔵量は世界一であり、1980年代までは南米でも最富裕国とされていた。チャベス大統領の時代からベネズエラは反米路線に走り、石油採掘設備の老朽化や原油価格の急落などから、外貨収入が減少した。米国の経済制裁などに加え、経済政策の失策なども手伝い、急速に経済実態が悪化した。つまり、ベネズエラは社会主義政府によって経済が崩壊したとされている。

これに対し政府は税収の激減を中央銀行からの信用供与で埋め合わせるという、いわゆる禁じ手の財政ファイナンスを行った、これにより急速なインフレが進行。IMFの予測ではベネズエラのインフレ率は年内に100万%に達する見込み。ベネズエラを出国する移民も増加し続けている。

これらを受けてベネズエラ政府はデノミを実施したが、その効果は出ておらず、むしろ事態をより悪化させている。

また、石油に裏打ちされた官製の仮想通貨となるペトロを基軸とする新しい法定通貨を流通させるとした。しかし、米国は制裁の一環としてペトロの取引を禁じ、世界中の主要な仮想通貨交換業者もペトロは取り扱っておらず、取引実態はない状態にある(日経新聞)。

まさに仮想の通貨まで利用しようしているが、これも事態を改善させるどころか、インフレを制御するどころか、より悪化させかねないものとなっている。

いまのところ、ベネズエラの危機的状況が世界経済に直接的な影響は与えておらず、日本国内への影響も限定的ではある。ただし、財政ファイナンスによるインフレの急激な進行を目の当たりにすると、日本でもそういった懸念となりそうなものは早めに振り払う必要があるようにも思われる。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年8月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。