「未来日本」政治塾、日本版ネウボラのまち明石へ!

去る8月23日、「未来日本」政治塾で共に研鑽に励む地方議員の皆さん20名と、台風の迫る兵庫県明石市へ視察に行って来ました。結論を先取りして述べるとすれば、日本の将来を憂えている方、とくに政治を志す方は、挙って明石市を訪れていただきたい。これが、明石市視察を終えた私の率直な感想です。

明石市を「子どもを核とするまちづくり」によって抜本的につくり変えたのが、泉房穂市長(55歳)です。弁護士出身で、同じ民主党で私と衆議院当選同期、同世代。泉市長は、国政を一期で勇退の後、平成22年に明石市市長に当選され、現在2期目です。「全ての子どもを、まちのみんなで、本気で応援」する。なぜなら「子どもは『まちの未来』」だから、と言い切る泉市長のヴィジョンはじつに明快です。

行政窓口、図書館、子どもに関わる様々な施設が入る「パピオス明石」館内を泉房穂市長(右端)にご案内いただく。

「子育て家庭」全体を包摂する子どもの未来保障

さて、私たち「未来日本」政治塾では、当初、児童虐待の防止(つまり、どのようにして子どもたちを虐待から守るか)を切り口に議論を重ねてきました。その結果、児童相談所の機能強化など虐待への事後的な対処は問題の「川下」対策に過ぎず、より根源的には、家庭において虐待を起こさせないための「川上」対策、しかも包括的な子ども子育て施策こそが、いま求められているとの共通認識にたどり着きました。

その「川上」政策を考える上において、明石市の取り組みは、待機児童対策を中心とする従来型の子育て支援策にとどまらず、「子どもを核とするまちづくり」を通じて人口問題対策から地域経済の活性化へとつなげ、しかも、持続可能な自治体経営のお手本というべきもので、訪問前に私たちが抱いていた期待や想像をはるかに超える目を見張るような成果を見せつけてくれたのです。

以下、子どもへの投資が、どのようなリターンを生み出したかを列記しましょう。数字は嘘をつきません。とくとご覧あれ!

子どもへの投資がもたらす大きな収穫

明石市の子どもへの投資

①中学生までの医療費(所得制限なしの無料化)

②第2子以降の保育料(所得制限なしの無料化)

③市営施設の子どもの利用料(所得制限なしの無料化)

④保育所受け入れ枠を2年で2000人拡大
→新たに働く保育士に最大30万円の一時金支給、家賃や給料も補助、認可外保育所の利用者に月額2万円、待機児童を在宅で育てる世帯に月額1万円を助成

⑤小学校1年生で1クラス30人以下にする

⑥中学校給食の全校実施

⑦小中学校へのエアコン全校設置

⑧中核市として初の児童相談所設置(来年度から)

⑨28小学校区すべてに「子ども食堂」設置(計37か所)

⑩乳幼児健診で100%の子どもの健康確認…..など。

投資額、すなわち子ども関連予算は、泉市長就任時の126億円(平成22年)から219億円(平成30年度)へ、じつに74%も増額されました。ここで、注目すべきは、明石市(人口29.3万人)の財政規模です。

平成30年(2018年)の一般会計予算は1,094億円で、人口30万人前後の同レベルの他の自治体に比べて、とくに裕福なわけではありません。たとえば、30.4万人の福岡県久留米市の予算規模は1,307億円、28.7万人の青森県青森市では1,227億円に上ります。(「未来日本」政治塾前田晃平事務局長調べ)

子ども達のための大胆な財政の構造改革

そして、視察に参加した地方議員の目をくぎ付けにしたのが、以下のような子ども関連予算を捻出した財源確保のための努力です。泉市長は、当初、高齢者予算を子どもに回すことを考え、敬老会行脚を繰り返したが総スカンだったと述懐されてました。高齢者も将来不安で余裕がないことを知り、行政の無駄の削減から着手しなければ市民の理解は得られないと悟ったといいます。そこから始まった市長の血のにじむような努力には心底敬服させられます。

市財政の構造改革

①市役所の組織再編などで職員数を1割、200人削減

②職員給与も一律4%削減

③公共事業費削減の目玉は、下水道整備計画に基づく予算総額を600億円から150億円に削減

④その他、公営住宅の改修費や各種補助金も次々に凍結

したがって、当初は、議会も商工会議所も商店街組合も猛反発。議会では自民党から共産党まで全会派一致で「市長に反省を求める決議」を可決されるなど、凄まじい抵抗にあったということで、泉市長自身、最初の5年間は本当に辛かったと真情を吐露されたのが、私たちの魂を揺さぶりました。

「それにもかかわらず!」泉市長の果敢な挑戦は粘り強く継続され、ついに、ここ3年で目に見える成果、つまり投資に対するリターンを生み出すようになったのです。

「子どもを核とするまちづくり」で活性化する地域経済

子どもへの投資に対するリターンは、つぎの「5つのV字回復」に顕著に表れています。

交流人口:明石駅前の歩行者通行量は、平成27年10月の19,650人から今や4割増の28,140人(平成29年2月)

定住人口:市長就任時、明石市は毎年平均1000人の人口減が「所与の事実」となっていたものが、平成25年から5年連続で人口増加に転じ、今や297,712人(平成30年8月)と目標の30万人達成は目前。しかも、人口増の中核は、みごとに「子育て中間層」(20代、30代と、その子どもの0-4歳児)の拡大によるもの、

出生数:平成27年から回復に転じ、3年連続で増加。

市税収入:主要税収入、納税者ともに増加をもたらし、昨年までの5年間に約20億円の税収増を実現。

地域経済活性化:たとえば、住宅需要の拡大により、住宅着工件数は過去4年間で約42%増加。商店街のにぎわいも、この2年で来街者は約43%増加し、新規出店も2年後の目標をすでに200%も達成したといいます。

出生数

平成27(2015)より3年連続で出生数が増加。【参考:明石市の資料を元に作成】

明石市を豊かにする「子育て中間層」の流入

このように、明石市では、泉市長を先頭に「子どもを核とするまちづくり」を徹底的に推進した結果、「20-30代の中間層の夫婦が子連れで転入し、2人目、3人目を出産する」というパターンが確立し、それにつれて出生数も回復し、市税収入も、納税者数や住宅需要などの増加により、5年前と比べて約30億円増加する見込みとなったのです。

そこには、自治体経営をめぐる冷徹な「戦略性」も見て取れます。それは、前述のとおり、泉市長は、「全ての子どもを、まちのみんなで、本気で応援する」という政策目標を掲げ、全ての子ども施策に所得制限を設けないという方針を貫きました。それは、単なる貧困や弱者対策ではなく、「子育て中間層」に施策の照準を合わせたからなのです。すなわち、従来型の子育て政策が対象とする低所得者層だけでなく、中間層の子育て世帯に恩恵が及ぶようにすることにより、納税者として市の財政を支える中間層を惹きつけ、明石市への転入を促すことを企図したのです。

子育て世代が増加

2013年1月〜2017年12月:転入者から転出者を引いた数【参考:明石市の資料を元に作成】

子どもへの投資は、未来への投資

皆さん、いかがでしょうか。子どもへの投資は、未来への投資です。それも、妊娠期から高校を卒業するまで、一人の子どもも、一つの子育て家庭も、決して置き去りにしないという信念に基づいて、予算も人材も集中させました。その上で、明石市は、民間団体や企業などとの緊密な協力の下で、あらゆる想像力を働かせて「子育て支援ネットワーク」の網の目をきめ細かくしていくことにより、まち全体に≪子ども投資(予算と人材を集中)→サービス向上→人口増→税収増→さらなるサービス向上・・・≫という持続可能な好循環を見事に実現させたのです。

「子どもの成育医療等基本法」で日本版ネウボラを実現しよう!

それでは、国政ではどのような取り組みが必要でしょうか。先月政府が取りまとめた児童虐待緊急対策(主に「川下」の対策)の実行ももちろん大事ですが、繰り返し述べているように、子どもを虐待から守るためには、その親や保護者、子育て家庭全体をきめ細かくサポートすること(つまり「川上」の対策)が不可欠です。

その意味で、私が最も力を入れているのが、議員立法で「子どもの成育医療等基本法」案の成立を目指す超党派の議員連盟における活動です。これは、現行の「母子保健法」を発展拡大させて、フィンランドにあるような「ネウボラ制度」(母子だけでなく子育て家庭全体を支援)を我が国にも確立しようというものです。今回視察した地方における明石市の取り組みと、国における子どもの養育と医療をめぐる環境を総合的に整備する取り組みが合体した時、はじめて虐待やいじめ自殺などの要因を社会から一掃し、真の意味で「子どもを産み育てることが楽しいと実感できる」日本が実現すると確信します。

次回は、9月11日から15日に訪れる予定のフィンランド視察報告をお送りします。乞うご期待。

衆議院議員 長島昭久

編集部より:この記事は、元防衛副大臣、衆議院議員の長島昭久氏(東京21区、無所属)のオフィシャルブログ 2018年8月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は長島昭久 WeBLOG『翔ぶが如く』をご覧ください。