アメリカ人の仕事満足度は2005年以降で最高も、死角あり?

労働市場の逼迫のおかげで売り手市場の様相を呈するなか、仕事に満足するアメリカ人は2017年に景気回復期で最高を記録しました。カンファレンス・ボードによれば51%となり、2005年以来の高水準となります。リーマン・ショックから10年を経て、成長加速の勢いを感じさせますね。

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(作成:My Big Apple NY)

カンファレンス・ボードは、結果に対し「労働市場の改善が満足度を押し上げており、2009年に10%を超えた失業率は直近で4%割れまで改善した」と説明しています。

年収別でみると、リッチな方々ほど仕事満足度が高い結果となりました。世帯年収7.5万ドル以上で58%に対し、7.5万ドル以下では45%にとどまります。給与水準への満足感も影響し、7.5万ドル以上が58%だった半面、7.5万ドル以下は24.9%に過ぎません。賃金以外でも、7.5万ドルを境に満足度は二極化し、7.5万ドル以上の福利厚生を始めあらゆる面で過半数が満足していた一方、7.5万ドル以下は「職場仲間」のみが50%を上回った程度です。

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(作成:My Big Apple NY)

これは消費者信頼感とも整合的で、高所得者層ほど信頼感指数も高水準にあります。

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(作成:My Big Apple NY)

両者の違いは、作業や目標達成が困難であればある程、職場で与えられやすい「感謝(appreciation、recognition)の気持ち」にあるのかもしれません。カンファレンス・ボードによれば、従業員の満足度は「他のどの項目よりも、感謝がカギとなる」と分析します。ウエストミンスター大学の調査でも、上司が仕事を評価してくれるならば従業員の69%が一段と勤勉に働くと回答していました。

ギャラップの調査でも、3人に1人が「十分仕事を評価してもらっている」と回答する程度でした。実に7割近くが評価されていない、つまりは労働に対し感謝されていないことになります。自身の仕事が感謝あるいは評価されていなければ、おのずと出口を探すというもので、こうした従業員が次の年に離職する確率は2倍に及ぶといいます。

仕事満足度に視点を戻すと、2017年こそ2005年以降で最高でしたが、30年前は60%だったんですよね。そうなると、まだ改善余地があります。部下のパフォーマンスに悩む上司の方々も多いのでしょうが、そんな時は一言「頑張ってるね」と声を掛ければ、少しは状況が改善されるかも?突然転職された場合の損失を考えれば、その一言に掛かるコストは低く収まるでしょうから。

(カバー写真:UN Women/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年9月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。